ココロもカラダも元気になる!
元気の種って?  |  食と健康 |  元気が出る植物写真  |  堀田清の元気が出るお話

ブログ「堀田清の元気が出るお話」

すずしろの花



北海道医療大学 薬用植物園・北方系生態観察園

野菜と果物のお話

ホウレンソウ 

ホウレンソウはアカザ科の1〜2年草でアフガニスタンからトルキスタンあたりの西アジアが原産地とされていますが、栽培化されたのはイランです。“菠薐”とはペルシア(イラン)のことで、原産地がそのままホウレンソウの名前になっています。その後回教徒によって東西に伝播し、東洋種(葉は大きな切れ込みのある剣葉で薄く、葉柄も細く短い。根元は鮮紅色。)と西洋種(葉は切れ込みの少ない幅広の丸葉で肉厚。葉柄は太く長い。緑色が濃く、根元の赤みは薄い。)の二系統が栽培されるようになったのです。ヨーロッパには11世紀に伝わり、15世紀以降広く普及したようです。一方、東方へ渡ったホウレンソウは17世紀になり日本に渡来しました。江戸時代初期(1630年)、林羅山の『多識目』にカラナ(唐菜)という名前で記載されているのが、文献上初めてのことです。昭和30年ごろから日本人の食生活の変化に伴い。おひたしだけでなく炒め物に用いられるようになって、西洋種が多く栽培されるようになりましたが、現在日本で栽培されているものの大半は両者を交配した雑種です。ところで、アメリカで作られたテレビ漫画、「ポパイ」を知らない人はいないのではないかと思いますが、主人公のポパイがブルートをやっつける前には必ずホウレンソウのカン詰めを開けて食べます。これは当時(1910年頃)、ホウレンソウ嫌いの子供たちに食べさせるための宣伝だったのです。もちろん「ポパイ」のせいでその後ホウレンソウの需要が伸びたことは言うまでもありません。

さてこのホウレンソウは栄養価の高い健康野菜の代表各として知られていますが、なんといっても鉄分の多さは100g中3.7gとニンジンやピーマンなどをはるかに上回っており牛レバーに匹敵する量が含まれていますので貧血の予防にたいへん効果的です。β-カロチンの量も葉野菜の中でもトップクラスですし、カロチンの一種で、黄色い色素成分のルテインも含まれており、両者ともにフリーラジカルをトラップする作用があるので癌予防に効果があります。もちろん抗酸化作用の高いビタミンCも豊富ですし、その他にビタミンB1, B2, K, 葉酸などの含有量も高ので健康に良いことがお分かりいただけるのはないでしょうか。さらにもう一つ、ホウレンソウにはミネラル分、特にカルシウムが多く含まれているので、骨粗しょう症の予防にも効果があります。

ところでホウレンソウのアクに含まれるシュウ酸は鉄分の吸収を妨げます。ホウレンソウをゆでるのはこのシュウ酸を除去するためですが、ゆですぎると先に述べた水溶性ビタミン群も流出しますのでゆでる時間は1〜2分程度にとどめ、冷水にさらす時間もごく短時間にします。ゆでる代わりに電子レンジで加熱して水にさらしてもシュウ酸を取り除くこともできます。また最近では生食用に改良されたサラダホウレンソウも出回っていますが、肥料や水を少なくしてシュウ酸値を低く抑えて栽培されたものです。おひたしやあえものにするのが一般的ですが、グラタンに使ったり、牛乳といっしょにスープにすればホウレンソウの栄養成分を丸ごといただけます。

野菜と果物のお話