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ブログ「堀田清の元気が出るお話」

すずしろの花



北海道医療大学 薬用植物園・北方系生態観察園

野菜と果物のお話

ジャガイモ

今回は、多くの人に愛され、親しまれている「ジャガイモ」についてお話しします。「ジャガイモ」(馬鈴薯、ジャガタライモ)はナス科の植物で学名はSolanum tuberosum L.です。原産地は中米から南米のアンデス山脈の当たりと言われています。1526 年スペイン人の征服者ピサロによってスペインに持ち込まれましたが、ヨーロッパではその後長い間観賞用として栽培されていました。ちなみにルイ16世の王妃は帽子の縁にジャガイモの花枝を飾っていたそうです。食用作物として栽培されるようになったのは17世紀のアイルランドで、小麦やライ麦の数倍の収穫高を誇るジャガイモは戦争や飢饉などで荒廃した畑に広く植え付けられたのです。現在、世界各国では二千種類以上の品種が栽培されており、世界の五大食用作物(小麦、水稲、大麦、とうもろこし、じゃがいも)の一つとされています。日本へは江戸時代初期の慶長年間(1596〜1615 年)にオランダ船によって長崎にジャガタラ(現ジャカルタ)港から運ばれてきたのが一番初めとされています。このジャガタラという地名がジャガタライモの呼び名になり最終的にジャガイモという名に落ち着いたのです。一方、北海道には江戸時代の寛政年間(1789〜1801 年)に長崎とは別の品種がロシアからサハリン経由で伝えられました。日本でもアイルランドと同じように、天明、天保の飢饉の時に、多くの人たちの命を救ったことでその価値が認められ、さらに明治初期に北海道の開拓が始まり多数の新しい優良品種が導入されてから広く日本中に普及しました。日本では現在二十品種が栽培されていますが、「男爵」と「メークイーン」の二種類で生産量のほとんどを占めています。

ホクホクとした味わいが特徴である「男爵」は、明治40年ころ、函館地方の農場主だった川田龍吉男爵がイギリスからアイリッシュ・コブラーという品種を導入し、栽培したことから男爵イモと呼ばれているのです。メークイーンは大正年間にイギリスから輸入された品種で通常甘味が強く、低温のところに置くとさらに甘味が増します。きめこまかな粘質で煮崩れしにくいため色々な料理に広く利用されています。

ジャガイモの主成分はもちろんデンプンを主とした糖質ですが、100 g 当たり77Kcalで、ご飯の半分程度の低カロリーであることをご存知ですか?またビタミンCが豊富に含まれていることもあまりよく知られていないことではないでしょうか。ジャガイモに含まれるビタミンCの含量は100g 中、約 23mgとミカンの 70% にものぼります。その上、他の野菜(白菜、キャベツ、ホウレンソウなど)のビタミンC は熱に弱いのに対して、ジャガイモのビタミンC は比較的熱に強いのが大きな特徴です。これはジャガイモのビタミンC がデンプンに包まれているからなのです。このことは、加熱によるビタミンCの損失が少ないことを意味しており、ジャガイモが多量に食べられる点をも考慮すると、ジャガイモが大切なビタミンC の供給源として大切な値菜の一つであることが分かります。ただし、ジャガイモの貯蔵の仕方でもビタミンC の含量が変る事も覚えておかなければなりません。3 〜 5℃で保存がベストでそれ以外ではビタミンC の含量が大きく減少してしまいます。またジャガイモには免疫力を増強し、微生物やガン細胞を排除する作用のあるレクチンというたんぱく質も含まれている他、食物線維も含まれるため大腸ガンの予防にも効果的です。その他含量は多くはないですが、ビタミンB1やカリウムも含まれています。

ジャガイモの芽にはソラニンというアルカロイドが含まれおり食中毒の原因になるのでこの部分を除去して食べなければならないことは皆さんご存知の通りですが、ジャガイモの発芽を抑えるためにリンゴ1個を混ぜて保存すると、リンゴの発生するエチレンの作用である程度発芽を抑えることができることはあまり知られてはいないのではないでしょうか。

野菜と果物のお話