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ブログ「堀田清の元気が出るお話」

すずしろの花



北海道医療大学 薬用植物園・北方系生態観察園

野菜と果物のお話

ニラ 

「ニラ」はユリ科の多年草で、原産地は東アジア(中国を含む)といわれており、歴史的には3000年以上前から利用されており、かなり古くからある野菜の一つです。中国、韓国、日本では栽培されいるものの欧米での栽培はなく代表的な東洋の野菜といえます。日本では700年ごろから栽培されており、『古事記』に「加美良(かみら)」、『万葉集』に「久君美良(くくみら)」などという呼び名で記述されています。後にもお話ししますが、「ニラ」には豊富な栄養素が含まれているため、昔から粥などに入れて薬膳料理のように使われていましたが、特有の臭いがあるため戦前までははそれ程利用されてはいませんでした。戦後、ギョーザなどに代表される中国料理が普及するにつれて需要が急増しました。ちなみに漢方では種子(韮子)を強壮、強精剤に使います。

「ニラ」に含まれる代表的な栄養成分は硫化アリル、β-カロチン、ビタミンE、カリウム、食物線維の5つです。硫化アリルは薬草園便りで何度も登場(ナマネギ、ネギ)している通り、ネギ類に共通して成分であり、血液の凝固を抑制する作用があり、動脈硬化や血栓予防に確実な効果が得られ他、エネルギー代謝に重要な働きを示すビタミンB1の吸収率を高める作用もあり、慢性疲労の回復、筋肉疲労の解消に役立ちます。一方、香り成分の硫化アリルには胃液の分泌促進作用があるので、消化吸収も良くなります。また、「ニラ」にはホウレンソウを上回るβ-カロチンが含まれており、このβ-カロチンがビタミンEと相乗的に働き、癌の原因の一つであるフリーラジカルを無毒化して体外に排泄するため免疫機能を高めて癌の予防、老化の防止に効果を示します。その他、β-カロチンには視覚、聴覚機能を維持する作用もあります。「ハクサイ」でもお話ししていますが、「ニラ」に含まれているカリウムはナトリウムの排泄を促しますし、先に述べた硫化アリルが血行を促進するので、高血圧の予防に役立ちます。

食物繊維の働きは皆さんもご存知の通りで、腸をほどよく刺激して、便を適度なやわらかさにして自然な排便を促します。日本人の腸の長さは西洋人のそれと比較してかなり長いのですが、肉食が多くなるとどうしても長い腸の中に腐敗した動物性蛋白質が滞留することになります。栄養分を吸収し終えた動物性蛋白質はできるだけ速やかに排泄されるべきであり、「ニラ」に限らず、食物繊維を摂取することは腸の長い日本人にとっては健康を維持する上でとても重要なことです。

ところで、「ニラ」といえば、一番最初に思い浮かべる料理はやはり「レバーニラ」でしょうか。レバーに豊富に含まれるのはビタミンB 群ですが、先にも述べたように、「ニラ」に含まれる硫化アリルにはビタミンB1の吸収率を高める作用がありますから、「レバーニラ」を食べるとビタミンB 群の体内滞留時間が大幅に上昇することになり、従って疲労回復効果が持続することになります。このように「レバーニラ」は「ニラ」と「レバー」の食効をお互いに高めあっていることがわかります。

「ニラ」は畑のヘリに土止めとして植えられるほど手間がかからない上、生命力がおう盛で一株から10回程収穫できます。家庭菜園などで新鮮な「ニラ」を栽培してみてはいかがでしょうか。 

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