タマネギ
9月くらいから北海道でも出回り始める「タマネギ」です。「タマネギ」はユリ科の多年草葉菜で、原産地は北西インド、タジク、ウズベク、天山の西部地区などの中央アジアからとされています。エジプトからヨーロッパ各地に広まったようです。古代エジプトには早く伝わり、一般的な食べ物として普及しました。ピラミッド建設の際には、奴隷に「ニンニク」、「ダイコン」とともに「タマネギ」を食べさせたという碑文もピラミッド残っており、体力をつけるために重要な食べ物の一つであったようです。その後、地中海地方を経てヨーロッパ全域に広まり、特にドイツやイギリスでは重要な野菜として扱われ、1347 年にヨーロッパで疫病が大流行した時に、ロンドンのタマネギとニンニクを売っている店では伝染を免れたといわれています。「タマネギ」が日本に入ってきたのは 1700 年頃ですが、当時のものは土着せず。 1870 年頃欧米から種子が導入され、北海道に土着しました。その後 100 年を経て日本は中国、インド、アメリカについで世界4位のタマネギ生産国になっているのです。
日本の品種はほとんどが辛タマネギで、目や鼻を刺激するにおいと辛味は、硫化アリルというイオウ原子を含んだ非常に揮発性の高い有機化合物です。加熱すると硫化アリルが変化して糖質と反応して甘味が出てきます。またこの硫化アリルという有機化合物はネギ類に共通の成分で血液の凝固を抑制する働きがあり、生で使った時にその効果を最も発揮し、動脈硬化や血栓予防に確実な効果が得られます。さらに硫化アリルにはエネルギー代謝に重要な働きを示すビタミンB1の吸収率を高める作用もあり、慢性疲労の回復、筋肉疲労の解消に役立ちます。さらに、タマネギに含まれるアリルメルカプタン、アリルメチルスフィドなどのイオウ含有物質や、ケルセチンというポリフェノールには発がん抑制作用があります。その他生タマネギにはカルシウム、リン、セレンなどのミネラルが含まれており、血液中の有害物質を清める働きがあるとされています。
タマネギを薬膳料理の食材の一つとみなすならば、生のタマネギが最も人の身体に良いと言えます。スライスしたタマネギを長い間水にさらしておくと、辛味が消えてしまいますが、食材としての効能という点から見ると、抗血栓作用などの有効性は辛味の消失とともに失われていくと考えた方が良いでしょう。従って、ある程度の辛味を残した生のタマネギを食べるのが身体に良いと言えます。ただし、あくまでも食材の身体に対する効能の観点からだけで、食味とは別の視点であることは言うまでもありません。
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