第1回将来ビジョン講座 開催報告
令和8年6月9日、令和8年度第1回将来ビジョン講座がZOOM形式で開催されました。今回の講座では「医薬品副作用被害救済制度と副作用、そして適正使用について ~2025年度改訂版」と題して、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 健康被害救済部 次長 中林哲夫先生にご講演いただきました。
中林先生からは、はじめに副作用による健康被害の特徴についてお示しいただき、医薬品副作用被害救済制度(以下、救済制度)創設においては、「サリドマイド事件」や「スモン事件」が契機となっており、健康被害者に対する迅速な救済が根底にあると解説いただきました。その後、救済給付の種類やその内容、請求の流れや請求に必要となる書類について説明があり、さらに普段あまり触れることが少ない請求後の審査として、医学的・薬学的判定を要する事項や因果関係等の評価に必要な情報について紹介いただきました。次に、副作用の健康被害の内訳では、皮膚や皮下組織の障害、神経系の障害、肝胆道系の障害というように、本人やその周囲が気付きやすい症状が上位を占めていること、また医薬品の内訳では解熱鎮痛消炎剤や抗微生物薬が上位を占めていることを直近のデータからお示しいただきました。特に上位を占めた医薬品については、歯科を含め多くの診療科で処方される薬剤であることから、健康被害が身近なところで生じ多くの薬剤師が救済制度に関わる可能性が高いと感じました。さらに、ラモトリギンを例に医薬品の不適正な使用と判断された場合には、健康被害発生時に給付を受けられない場合があることを紹介いただきました。用法・用量の遵守や必要な検査の実施については、薬剤師が行う処方監査の中で確認できる内容も多いことから、日常業務の中で医師や歯科医師に対する疑義照会をしっかりと行うことが、救済制度利用の観点からも重要であることを再認識しました。
後半は、医薬品安全性情報報告制度(以下、副作用報告)について解説いただきました。副作用報告対象としては、従来から示されている死亡や障害等の11項目に加えて、CTCAE-JCOGのGrade3以上の症例や医薬品リスク管理計画書(RMP)の重要な潜在的リスクに記載のある事象なども該当することが紹介されました。具体的な副作用報告数については、企業報告に比べて医療関係者が直接報告する一次情報が非常に少ない現状が示されました。臨床試験では、被検者の安全性を確保するためリスクが高い患者が除外される等、実臨床での集団のごく一部しかカバーできていないことから、医師、歯科医師、薬剤師は市販後に得られる副作用情報の重要性を理解しなければならないと強く感じました。
本講座の受講を通して、医薬品による副作用に関わる各制度の内容と、制度利用の中で薬剤師に求められている役割について深く学ぶ機会となりました。