第7回 将来ビジョン講座 開催報告
令和8年3月10日、令和7年度第7回将来ビジョン講座が札幌サテライトキャンパスとWebとのハイブリッド形式で開催されました。今回はディスカッションを交えた症例検討会として、JCHO北海道病院の稲井邦宏先生と、クリオネ北17条薬局の大沢光平先生にそれぞれの現場における具体的な症例をご提示いただきました。
はじめに、JCHO北海道病院の稲井邦宏先生より「「よくならない感染症!立ち止まり、問い直す抗菌薬治療~薬剤師に求められるジェネラリストの視点~」と題して、感染症の症例を2例提示いただきました。
症例1(肺炎入院患者): 症状は改善したもののCRPが低下せず、抗菌薬の変更も無効であった。外来で処方されていたコルヒチンが休薬されていたことに着目し、整形外科の受診を主治医に提案した結果、偽痛風による炎症が原因であることが判明した事例でした。
症例2(細菌性肺炎/誤嚥性肺炎疑い): SBT/ABPCやTAZ/PIPC、AZM等の抗菌薬治療に反応しなかった。検査結果から血尿、蛋白尿、腎機能の悪化などが見られたことから、感染症以外の可能性を考慮し、医師に腎臓内科の受診を提案。最終的にMPO-ANCA関連腎炎と診断され、適切なステロイド治療へと繋がった事例でした。
稲井先生は、抗菌薬の投与前後で考えるべき事柄や、入院患者の発熱に対するアプローチについて解説され、感染症が改善しない場合には、「何が悪さをしているのか」をよく考えることが重要であると話されました。
続いて、クリオネ北17条薬局の大沢光平先生より、「保険薬局における大腸がん患者への介入事例」と題して、70代女性の大腸がんの症例を提示していただきました。
症例(70代女性の大腸がん):1次治療(CAPOX+BEV療法)から2次治療(IRIS+BEV療法)へ移行した事例でした。
IRIS療法の副作用では下痢、食欲不振、腹痛などが強く出やすいこと、S-1は流涙が起こりやすいことを話されました。また、イリノテカンは便秘により腸管からイリノテカンの活性代謝物SN-38の排泄が遅延すると、腸肝循環により重篤な粘膜生涯が起こる恐れもあるため、下痢だけでなく便秘にも注意が必要であると述べられました。
フォローアップにおいて、腸閉塞のリスクがある中、ロペラミドと便秘薬を適正に使用することで排便コントロールができたこと、エスワン配合錠による手足症候群が発現したが、保湿剤・ステロイド外用剤の追加で改善することができたこと、また浮腫が軽減していない可能性に気づき、速やかに病院へ受診勧奨を行ったことで、3コース目の治療再開に繋げることができたことをお話しいただきました。
最後に入院から外来へ移行する患者に対し、シームレスかつ安全ながん治療を継続するためには、患者との信頼関係、薬局薬剤師による薬学的介入と薬薬連携が重要であると述べられました。
受講者からはフォローアップも薬剤師の職能であり、重要な位置づけであることを学んだ、臨床推論を意識して業務に取り組みたい、日々の業務を見直す良い機会となったという意見が寄せられました。