第5回将来ビジョン講座 開催報告
令和6年12月10日、令和6年度第5回将来ビジョン講座が本学札幌サテライトキャンパスを配信会場にハイブリッド形式で開催されました。「心不全薬物療法って最近多すぎませんか?というあなたに贈る心不全診療のエッセンス~多職種での心不全マネージメントを目指して~」と題して、手稲渓仁会病院心臓血管センター 循環器内科 主任医長 西崎公貴先生にご講演いただきました。
西崎先生からは、はじめに「心不全の基礎知識の整理」について解説いただきました。心不全は心臓がどのような状態にあり、そしてどのような分類(AHA Stage分類、NYHA分類、左室駆出率による分類)によって病態を評価されているのかについてお示しいただきました。また、ナトリウム利尿ペプチドの1つであるBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)とNT-proBNPを用いた心不全診断や循環器専門医への紹介基準のカットオフ値についてご紹介いただきました。BNPが100 pg/mL以上で心不全の可能性が高くなるという従来の検査値の捉え方に加えて、35 pg/mL以上から外来でしっかりとフォローすることの重要性をお示しいただきました。
その後、「心不全薬物療法up to date」のお話では、心不全治療の必須薬であるTriple Therapy(ACE阻害薬、β遮断薬、MR拮抗薬)が今後Quad Therapy(ARNI、β遮断薬、MR拮抗薬、SGLT2阻害薬)へシフトしていることについて、各薬剤単独あるいはコンビネーション療法時の有効性に関するエビデンスをお示しいただきました。さらに、診療ガイドラインに基づく標準治療(GDMT:guideline-directed medical therapy)導入時や増量時のポイント、あるいはクリニカルクエスチョン(GDMTはいつまでに始めたらいいのか?)を最新のエビデンスにより解説いただきました。
後半の講演では、心不全再入院を防ぐためにセルフケアが重要であり、その維持には心不全手帳を多職種で共有・活用することにより、患者のセルフケア能力が向上することについて、自験例を交えてお示しいただきました。
現在、心不全療養士制度が発足し、診療報酬の面からも薬剤師の積極的な関わりが期待されています。講演終了後は、会場受講者、リモート受講者それぞれから質問が寄せられ、心不全薬物療法に対する関心の高さが伺われました。
また、受講された方のポートフォリオにおいても、心不全の基礎知識を整理することができた、講演の中で紹介されたセルフケア行動に注意して患者をフォローしていきたいといった意見が寄せられました。