第3回将来ビジョン講座 開催報告
令和6年10月15日に令和6年度第3回将来ビジョン講座が開催されました。「能登半島地震が教えてくれた薬剤師が災害支援に備えるための第一歩」と題しまして、かがやきクリニック・サードベース診療所小林星太先生と株式会社ケイ・クリエイトこやま薬局金田崇文先生をお招きしてご講演いただきました。
はじめに小林先生にご講演いただきました。小林先生はご自身でこれまで災害支援に平時から意識して備えていたわけではないということをお話されました。その上で知識が十分でないままに能登半島地震の対応に迫られる日々について一日ずつお話いただきました。先ず小林先生がはじめにお話しされたことは、能登半島地震は元旦に発生したことから、安否確認のメールやFAX等の連絡を取り合うことが、非常に困難な状況であったということでした。そこで小林先生のご提案で、SNSを用いたオープンチャットを開設されたということです。このオープンチャットは9月時点で約370名が参加されているとのことです。
オープンチャットは被災状況の把握、薬剤師会からの情報発信、質問や問い合わせ、支援者の募集のツールとして非常に有用であったということでした。また1月4日になると、能登北部地区の危機的状況が明らかとなっていく中で、処方せんを巡るトラブルが発生していたことについてお話いただきました。厚生労働省の事務連絡の一部分だけがニュースで切り取られてしまったことによって、現場に混乱を招いてしまったことがあったことから、災害時の情報の取り扱いには十分に注意する必要があるという事を述べられました。
続いて、約1週間が経過したところで災害処方せんが出回り始めたことについてお話いただきました。災害処方せんでは災害救助法が適応となり、保険医療機関では発行されない、健康保険は適応されない、ということを解説されました。さらに、災害処方せんの様式や運用について解説いただきました。そして、モバイルファーマシーの派遣や志賀町富来地区への支援、避難所巡回の様子についてご紹介いただきました。小林先生は、避難所では約1割の避難者は14日以内に持参薬がなくなってしまうことや、自宅が倒壊して薬を持ち出すことが出来ずに、自己中断している避難者も多数認められていたことについてお話しされ、そのような状況に待ったをかけられるのは、薬剤師の重要な役割であるということを述べられました。
続いて二人目のケイ・クリエイトこやま薬局金田崇文先生にご講演いただきました。
災害医療の全体像から知識として知っておいてほしいこと、学んでいくための心構えとヒントの3つのタイトルに沿ってお話しいただきました。
まず災害医療の全体像として、大規模災害時には被災状況の全体を把握して対応方法を他職種と連携して決めなければならず、情報をどこに集めるのかを知っておく必要があると述べられました。情報は保険医療福祉調整本部に集められます。金田先生は、本部で受けた質問として、薬局の被害状況、地域の薬局での調剤の可否、医療者はいるが薬がないがどのようにしたらよいか、といった質問を受けたとのことです。医療チームが来ても薬を供給できるわけではなく、我々地元の薬局自体が、災害時の貴重な資源となるということを述べられました。
続いて、知識として知ってほしいこととして、はじめに金田先生が述べられたことは、過去の災害の教訓では準備(知識)があれば困らなかった、ということでした。医薬品関連法規による規制について解説していただき、災害対策基本法や災害処方せんについて、さらにオンライン資格確認とアクティブ化についてはしっかり把握しておく必要があるということでした。
最後に、学んでいくための心構えとヒントとして、災害対応をする目的は、防ぎ得た死を防ぐことであるということ、災害対策は広くて深いため、手のつけやすいことから対応すること、災害支援とはすなわち人道支援である、と述べられました。薬剤師のための災害マニュアルは、一度は目を通しておいてもらいたいというメッセージを述べられて講演の締めくくりとされました。
ポートフォリオより、災害が起きた時に、薬剤師としてどのように動けばいいのか、平時からどのように準備していくのかというヒントになったという意見や、災害処方箋と災害時の保険処方箋の知識を身に付け、停電時にどう調剤するなどのシミュレーションを行っておくことが、災害に備えるために今後の業務に応用できると思ったといった意見が寄せられました。