北海道医療大学

第4回将来ビジョン講座 開催報告

令和5年11月14日に第4回将来ビジョン講座が開催されました。「モバイルファーマシーと歩んだ9年間を振り返って」と題して、公益財団法人大分県薬剤師会より伊藤裕子先生をお迎えしてご講演賜りました。

伊藤先生は冒頭のスライドで数枚の写真をご紹介されました。その中の一枚に、先生が予備自衛官として活動されている写真がありました。訓練は5日間あるということでしたが、伊藤先生は自衛官の活動に敬意を示しながら、必要な事を自ら進んで行う楽しさを表現するようにお話されていたことが印象深かったです。

はじめに、大分県薬剤師会の災害対策への取り組みについてご紹介されました。その中で、モバイルファーマシーの正式名称は災害対応医薬品補給車両である、ということを是非皆様にも覚えておいてほしいと述べられました。熊本地震が発生した時の災害対応の内容と合わせて、モバイルファーマシーの活動の実際についてお示し下さいました。発生時点からの対応の流れ、タイムスケジュール、現地到着までの苦労や到着後のDMATの会議への参加、夜間の地震発生時の状況や、怪我をしてしまったエピソードなど、実際に対応に当たられた伊藤先生からしか聞けないお話を多数教えてもらう事が出来ました。

なかでも、お薬手帳の活用状況のお話は興味深く、お手帳を持参していた方では数分で処方薬をお渡しすることができるところ、持っていない方では医師の診察を含めて1時間以上の時間を要したことのお話は、災害時のお薬手帳の役割がよく理解できた内容でした。他のお話では、種類の少ない医薬品の中で普段から多剤を服用していた方に対して、1剤しか提供できなかったにも関わらず、1剤だけでもあって良かった、安心したと非常に喜ばれたという印象的なお話がありました。実際のモバイルファーマシーの中での運用面で苦労したことは、搭載医薬品のリスト情報がない等の引継ぎが困難だったこと、お薬相談コーナーの開設時にネット環境がないため、ネットに繋がっていない状況でも使用できるアプリが便利であったというお話がありました。災害時では、ネット環境はないものとして考えてそのようなアプリを平時から準備しておいた方がよいでしょうというお話をしていただきました。

続いて、BCPをテーマにお話しいただきました。BCPの準備状況は全国でもまだ十分に整備されているとは言えない状況とのことで、運用を進めていくにあたり調査を行ったということでした。結果は、BCPを準備している施設では災害時の連絡手順や安否確認、避難場所をよく把握できているのに対して、準備中または準備の予定がない施設では、そのような災害時に必要な情報の共有が不十分であった結果をお示しいただきました。各地方自治体や薬剤師会で準備されている災害対応マニュアルや、BCPのひな型を利用して、準備を進めていくことが肝要であると述べられました。

ポートフォリオでは、実際の災害時の写真や苦労した点について詳しく説明頂いたので薬剤師の災害時における役割についてよく理解することができた、といった意見や、ビジュアル情報を得ることでどのような活動対応ができるか役に立つ、という意見がありました。

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