北海道医療大学

第6回将来ビジョン講座 開催報告

令和2年11月10日、将来ビジョン講座第6回として災害医療をテーマに「ウィズコロナ時代の災害対策における薬剤師の役割」と題して、日本赤十字北海道看護大学看護薬理学領域 教授 根本昌宏先生にご講演いただきました。過去数年間にわたり、先生には薬剤師の災害に対する意識向上のために繰り返しご講演いただいております。

根本先生は現状について、未曽有の経験に晒されていると述べられました。避難所に必要な備品や配置、避難環境の確保の方法等が定まり、災害対策の手応えを感じ始めた矢先に、新型コロナウイルス感染症により全てを考え直さなくてはならなくなったためです。そのような中、新型コロナウイルス感染症下で初めて求められた事として、在宅避難、分散避難をあげられました。特に、在宅避難については内閣府からその可能性について提言されているものの、根本先生は、自己責任が大きく関与するため、必ずしも安易に進められる方法ではないとし、停電と断水は想定内として、自宅は避難所として安全な場所なのか否かを、先ずはハザードマップにて把握しておくことが肝要であると述べられました。実際にハザードマップを確認した経験の有無により避難行動に大きな差がついたとのデータをご紹介いただきました。薬剤師に期待する有事に備えた行動指導の一つとして、ハザードマップの確認を促して欲しいということを切に訴えられました。

続いて、災害関連疾患を防ぐことについて述べられました。災害関連疾患の内、特にエコノミークラス症候群は車中泊で発症しやすいと述べられました。さらには、災害関連疾患とは別に、令和元年東日本台風19号および20号による被害の内訳について示されたデータで、車中死すなわち車での移動中あるいは車で避難していて巻き込まれて死亡した数が、実に全体の3割を占めていたというものもありました。興味深い事にはその後の解説の中で、新型コロナウイルス感染症の前後に比較して取った「避難先として先ず考える事は」という問いに対して流行前後で「車中泊を選択する」との回答が飛躍的に増えたというデータも示されました。根本先生はこれが非常に危険な状況になっているということを非常に危惧されておりました。先ず被災者さらには平時では市民等々に対してその避難行動が正しい行動か判断できるように指導する必要が極めて重要であるとの認識を示されました。避難とは難を避けるための行動であることと繰り返し述べられましたが、我々薬剤師も普段から接する患者や市民とそのような会話を傾聴あるいは投げかけてみる機会を作る事からはじめるべきであると感じました。

新型コロナウイルス感染症流行に伴う避難所環境の変化のお話の中で興味深かったデータに、ダイヤモンドプリンセス号内部における感染源についてのものがありました。感染源として最も影響していたのは浴室トイレ内の床であったことが示されていました。根本先生は以前から避難所生活においてトイレは非常に重要な役割を持っていると述べられていました。トイレの衛生環境を改めて考え直して感染拡大防止を実践していくことは非常に難しい課題でありますが、我々薬剤師一人ひとりが対策することは可能であると述べられました。

ポートフォリオより、過去の災害から学び活かしていくことの重要さを理解できたとの意見や災害時の薬剤師の役割を改めて理解できたとの意見をいただきました。

~アンケートより~

  • トイレ・キッチン・ベッドの環境を整えることが健康や命に大きく関わり、それらの環境整備においては薬剤師も関与することができると学んだ。
  • 実際に学校薬剤師として参画しているため、学校薬剤師の任務として災害対策があることを加えていきたいと思います。
  • 災害時には正常性バイアスを解除し、行動を起こすことが大切だと学んだ。緊急時に即座に避難行動が取れるよう、自宅や職場付近のハザードマップを確認し、避難の知識を得ることが極めて重要であると学んだ。また、防災バッグの用意はしているが、今一度中身の確認をしようと思った。

薬剤師支援
センター

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