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ブログ「堀田清の元気が出るお話」

すずしろの花



北海道医療大学 薬用植物園・北方系生態観察園

漢方のお話

健康の極意

T.はじめに

 私たち北海道人はとても大切なことを忘れてはいないでしょうか。北海道には人間の手がまったく入っていない大自然が、本州とは比べ物にならないくらいの規模で残されており、私たちはこの北海道に住んでいるだけで、その恵みを気づかないうちにたくさん受けているということを。また、少し手を伸ばすだけで、もっと多くのすばらしい恵みを受け取ることができることを。温泉、スキー、山野草観察、トレッキング、ドライブ、家庭菜園など、何をするにしても本州に住む人に比べて手軽にお金をかけずに、かつ盛大に楽しむことができます。北海道に住む私たちにとってはそれが当たり前になっていて、それが非常に価値のあることだと気づかないでいる人も多いのではないでしょうか。

 たとえばドライブと温泉を組み合わせてみましょう。札幌から郊外に向かって豊かな田園風景の中を小一時間もドライブすれば露天風呂とサウナ風呂つき、休憩所は時間無制限で無料、1000円でおつりが来る温泉がいくらでもあります。いわんや温泉地に住む地元の人たちは、そんな温泉を銭湯代わりに使って、毎日仕事が終わった後、みんなでワイワイ言いながら湯船に浸かって一日を終える。よくよく考えてみるとこれほど贅沢な時間と空間の使い方があるでしょうか。

 これらはすべてお金を出したからといって手に入るものではありません。人が作ったモノならばお金を出せば簡単に手に入りますが、大自然がくれる大いなる恵みはお金には変えられないものです。人間の小ささを思い出させてくれる広大な大地、長く厳しい冬、その後に来る春を待つ心、つかの間のさわやかな夏の季節、新鮮な海や山の食材とその旬を感じる心。これらをいつも肌で感じながら生きていることは、とても幸せなことです。お金を出せば一週間なり一ヶ月なり旅行に来てそれを感じることはできるでしょうが、私たちはここに住んでいるのです。私たち北海道人はそれらの価値を再認識して、「北海道はこんなにステキなんだ!」と全国に発信しましょう。北海道の再生と未来のためには、先ず私たちが北海道のステキな大自然から四季おりおりの「気(生命エネルギー)」をもらいながら、心も身体も健康で前向きに人生を進むことが大切なことです。

U.健康の極意

 最近の日本人の中には不規則な生活リズム(夜更かしや運動不足など)で、安易な食べ物を食し、病気になると安易に薬に頼って、その結果、ヒトが本来持っている免疫能力をどんどん低下させ、病気にかかり易い人が増え続けているように感じられます。健康的で心豊かな生活を送る一番の基本は、何と言っても正しい食生活です。ファーストフードで食事を済ませ、それを補おうと栄養補助食品を大量に摂取する人が増えていますが、食生活をおろそかにしていて、どうして明るく前向きに人生を送ることができるのでしょう。健康を保つために大切なことは、身体に良いものをただ食べるだけではなく、感動しながら色々な人、物に感謝しながら毎日を前向きに生きること。その中でも「食」を大切にすることは前向きに生きるための基本です。とかく日本人は健康に良いと聞くと、それだけを集中して食べたり飲んだりする傾向があるように思えます。例えばポリフェノールいっぱいの赤ワイン。赤ワインに含まれるポリフェノールよりもアルコールの方が多いので、飲みすぎると当然、体を壊します。食品の場合も同様で、色々な物をバランス良く食べないといけません。医療費の値上げで、病院通いもままならない昨今、貯蓄の秘訣は何といっても病気にならないことです。

 「健康の極意」の一番の基本は、目、鼻、耳、口を使って大地に流れる気(生命エネルギー)を私たち自らが感じ取り、それを自らが育むこと。これは中国漢方医学の根幹をなす考え方でもあります。大地に流れる気を取り入れるとはどういうことでしょうか。それは目に映る美しい風景、季節の香り、風や海のざわめき、毎日口にする旬の食材、私たちの身の回りの全てに対して「感動する心」「旬を感じる心」「感謝する心」を持ちながら生きることです。ひょっとしたら現代の日本人が今、最も必要としていることかもしれません。お金を出せば何でも手に入れることのできる現代の物質文明の中では、その心を持ち続けることは難しいことかもしれません。次の章では、私たちにとって最も身近で毎日欠かすことのできない「食べること」を通して、「気を取り入れる」お話を具体的に述べていきます。

V.北海道の薬膳・・・「鍋料理」

 先ず初めに「薬膳」のお話から・・・。中国では古くから滋養強壮の目的で、また病気の治療効果を高めるために、漢方薬と食材を組み合わせた調理方法がありました。これが薬膳の原形です。不老不死、長寿をめざした中国独特の食文化として今に伝えられています。薬膳には「食療」と「食養」の2つの考え方があります。

「食療」:病気の治療を目的とする薬膳
「食養」:病気にならないように未病の状態を保つ(病気の予防を目的とする)薬膳

 いずれの考え方でも、薬膳の基本は「食べ物全体に流れる気(生命エネルギー)を体内に取り入れ元気になる。」ということにほかなりません。現代医学の言葉に置き換えるならば「自己免疫力、自然治癒力を高める」ということになるのでしょう。この章でお話したいのは「食養」の方です。

 薬膳の考え方は中国の食文化から生まれ発展してきたわけですが、この薬膳が日本人や、世界の色々な国の人たちにそのまま当てはまるのでしょうか・・・・?私は「否」だと思います。なぜなら、食事に利用される野菜、魚、肉などの食材の種類がそれぞれの国によって大きく異なっているからです。インド人のようにほとんど肉を食べない国もありますし、野菜の食文化がほとんど無かった高緯度のヨーロッパの国々、新鮮な魚が取れない国だってetc・・・。もちろん中国の薬膳料理を否定するつもりは全くありませんが、「その国々で取れる食材を使った、その国々にあった薬膳料理があるのではないか」というのが最近の私の持論です。もちろんそれらが薬膳料理とは定義されていない料理も含めてです。いずれにしても医薬品のほとんど無かった太古の昔では「食べる」=「薬」=「生命を維持する」=「薬膳」だったはずです。現代人の「美味しいもの、好きなものを食べる」はその時代の「食べる」とは全く意味が異なるわけです。

 日本人には日本人の食文化があり、さらに北海道には北海道の食材を活かした薬膳料理があってよいはずです。我が北海道は真鱈(まだら)、鮭、イカ、牡蠣(かき)、ツブ貝、ホッキ貝、ホタテ貝、カニ、エビなどの新鮮な魚介類もちろんジャガイモ、ダイコン、キャベツ、白菜、春菊、ネギなどの野菜、新鮮な大豆を原料にした手作り豆腐、それに何と言っても鍋料理に欠かすことのできない昆布の大産地です。「さあ鍋をしよう!」と言ってもすぐに新鮮な食材を手に入れることのできるのは北海道ならではです。「食べ物全体に流れる気(生命エネルギー)を体内に取り入れ元気になる」のが薬膳の考え方ですから、鍋料理は北海道人にとっての薬膳料理と言えるのではないでしょうか。

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