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ブログ「堀田清の元気が出るお話」

すずしろの花



北海道医療大学 薬用植物園・北方系生態観察園

山菜のお話

エゾノリュウキンカ

漢字で「蝦夷の立金花」と書きます。直立した茎に黄金色の花につけられたものですが、スキーシーズンも終わる4月末頃、山麓の湿地帯一面に咲く黄金色の花はまさに名前通りといえます。この植物はキンポウゲ科に属していますがキンポウゲ科には猛毒植物のトリカブトをはじめキツネノボタン、オトコゼリのように有毒植物が多く、山菜として食用に供することのできるものは、「ニリンソウ(フクベラ)」と「エゾノリュウキンカ」、「バイカモ」、「サラシナショウマ」くらいのものです。はじめの二つはともに東北、北海道の重要な山菜で、春先に咲く花はとても美しく味も含めて一級品の山菜といってもよいでしょう。

北海道では「エゾノリュウキンカ」というよりは湿った谷地に好んで生えることから「ヤチブキ」と呼ぶ方が一般的ですが、秋田や山形の一部ではキク科の「サワオグルマ」のことを「ヤチブキ」と呼ぶので区別しなければいけません。いずれにしても、「エゾノリュウキンカ」は東北の奥羽地方と北海道にしかないので、北海道独特の山菜といっても良いでしょう。

さてこの「エゾノリュウキンカ」、葉、茎、花、花茎の全てが食用になります。大きくなるにしたがって苦味が強くなります。出始めの頃なら、苦味が少ないので、熱湯にくぐらせる程度で食べられます。大きく育って緑色が濃くなったものは苦味が強いので、さっとゆでて、半日くらい水さらしておく方が良いでしょう。食べ方は、生のままみそ汁の実、おひたし、酢みそ和え、ゴマ和え、二杯酢、三杯酢、マヨネーズ和え、佃煮、油いため、卵とじなど色々楽しむことができます。

色々な本を調べてみると、昔の札幌にはたくさんの湧泉(清流のわき出るところ)があって、そのまわりには春になるとたくさんの「エゾノリュウキンカ」が咲き乱れ、真っ黄色になっていたそうです。今の札幌からは全く想像できないことです。都市化が進み、地下水が下がり、湧泉や小川が消えて川がドブ化するにつれて清流を好む「エゾノリュウキンカ」は札幌市内から減っていったようです。たまたま残っていても、茎をひっぱれば湿地に生えているがゆえに根こそぎとれてしむのでどんどんその個体数は減っていきます。もちろん庭や鉢植えしても育てることは無理です。

実はこの環境の変化に最も弱い「エゾノリュウキンカ」の大群落が北海道医療大学の遊歩道内に存在します。今年も5月の連休明けには保安林内の湿地帯が真黄色になりました。「カタクリ」と「エゾエンゴサク」の群落も春先の見どころの一つですが、この「エゾノリュウキンカ」の大群落もとってもステキです。4年前に保安林内の植物調査をした時に比べて谷全体に「エゾノリュウキンカ」がかなり増えています。春先の5月上旬までは、その年に降った雪解け水が谷に流れこみます。その水際にはどんどんこの植物が増えているようです。来年の春先にはぜひ皆さんも遊歩道を散策しながら真黄色になった谷をご覧になって下さい。

ただし、北海道に住む私たちにとってはあたり前のように思える植物ですが、今ではそう簡単に見ることのできなくなった植物であることも忘れないで下さい。この北海道に独特で本州では見ることのできない、また環境の変化にはとても弱いこの「エゾノリュウキンカ」を大切にしていただきたいと思っております。

山菜のお話