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ブログ「堀田清の元気が出るお話」

すずしろの花



北海道医療大学 薬用植物園・北方系生態観察園

山菜のお話

エゾエンゴサク

雪どけ後の早春、林の下草として「カタクリ」や「ニリンソウ」などといっしょに大群落をつくるケシ科の多年草の「エゾエンゴサク」(蝦夷延胡索)です。「カタクリ」、「ニリンソウ」といっしょで、早春まだ背の高い植物や木々たちが活動を始める前に花を咲かせます。花の基本色は明るい空色ですが、気のせいか、晴れた日と曇った日で異なり、濃い青紫色だったり赤紫色に感じる時がありますし、時にはまれに白い花を見つけることもあります。いずれにしても、足を止めて大群落を形成している一つ一つの花をじっくり眺めてみると、色合いが全然異なって見えるステキな花です。ライフサイクルはとても短く6, 7月、夏も盛りだというのに、小さな実を結んで、地上部は枯れそのまま翌年の春まで休眠してしまいます。これは「ニリンソウ」と同じですね。北海道では郊外をちょっと離れるだけで平地でも簡単に見ることのできる植物ですが、本州では少なく、高い山に登らないと見ることのできないので、高山植物としてしばしば写真集で紹介されているほどです。

この早春に美しい花を咲かせる「エゾエンゴサク」茎葉はもちろん、花まで食べてしまうことができます。アクがなく、全くクセがないので、さっとゆでてオヒタシして食べるのが一般的です。地上部ばかりではなく地下の塊茎も食べることができます。アイヌの人たちはこの塊茎のことを「トマ(toma)」と呼んで、茹でて干したものを貯蔵しておいて、必要に応じて湯で戻し、アザラシの油などで調理して食したそうですが、幕末の探検家、松浦武四郎も釧路、阿寒を廻った時、「トマ(toma)」をカユにして食べたことを日誌に書き記しています。また、この「トマ(toma)」(エンゴサクの塊茎)は、漢方で延胡索と呼び、鎮痛や婦人病に使われています。ただ、やはりこの美しい植物を守るためにも塊茎はとらず残しておきたいものです。

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