この研究は、パーキンソン病患者の歩行障害改善に対する「笑顔トレーニング」の効果を検証したケーススタディです。笑顔トレーニングは、顔の筋肉運動と前向きな言葉を唱える10分間の訓練で、通常の理学療法前に実施されました。結果として、Timed Up and Goテストで歩行速度の向上と歩数の減少が確認されました。また、10メートル歩行テストの速度向上や、パーキンソン病の症状である動作の遅さ(無動)の改善も見られました。患者の心理面では、より前向きな発言が増えるなど、気分や意欲の改善傾向が観察されました。これらの効果は実験終了後4週間経っても持続していました。ただし、この研究は1名の患者のみを対象としているため、結果の一般化には限界があります。しかし、簡単で副作用のない笑顔トレーニングが、パーキンソン病患者の歩行障害を改善する可能性を示唆する興味深い結果が得られました。今後は、複数人を対象とした研究で、この効果を検証していく予定です。
原田さんからのコメント:
岩部先生をはじめとする職場の方々にお力添えを頂きながら、この研究を形に残すことができ、嬉しいです。本研究を通じて、少しでも学問の発展に貢献できれば幸いです。今後も臨床場面での疑問を大切にし、様々な考えに触れ、研究を続けていきたいと思います。このような貴重な機会をいただき、心より感謝申し上げます。
論文情報:
Harada Y, Iwabe T*, Ota K, Hamada S, Moriwaka F. Effects of Smile Training on Gait Disturbance in Parkinson’s Disease Patient with Neuropsychiatric Symptoms: A Single Case Design. PTR. 2024. [In-press].
J-stageで早期公開されています。
原田 夢叶さん(理学療法学科5期生、北海道脳神経内科病院勤務)
岩部 達也講師(理学療法学科、リハビリテーション治療学分野)