北海道医療大学

第5回将来ビジョン講座 開催報告

令和3年11月9日に第5回将来ビジョン講座が開催されました。講師はファルメディコ株式会社代表取締役社長/北海道医療大学客員教授の狭間研至先生です。「薬局経営3.0 ~水車小屋型薬局からの脱却~」と題して、新たに必要とされるイノベーションの考え方を軸に、現状の調剤薬局が抱える問題点やこれからの薬局の在るべき姿についてご講演いただきました。

狭間先生は、本講演のテーマを3つのアジェンダに分けて述べられました。第一のアジェンダは「調剤薬局に起こっている変化とは?」です。今回の題目にも挙げられている「水車小屋型薬局」とは、すなわち「水源」である医療機関の近くに「水車小屋」として調剤薬局を構えるような、立地条件さえ良ければ経営が成り立つ薬局を指しています。しかしながら、コロナ禍の影響で受診控えが顕著となり、顧客や売上が減少した結果、調剤薬局の倒産件数が過去最大となった事から、水車小屋型薬局モデルの限界が浮き彫りとなっている解説されました。今後は、在宅業務やセルフメディケーションの充実に向けて、OTCに関連した業務に注力していく必要性があり、まさに今、「CIPPS;COVID-19 Induced Pharmacy Paradigm Shift 」が到来しているとお話しくださいました。

第二のアジェンダは「調剤薬局の2つのイノベーションを考える」です。狭間先生はかねてより、薬機法改正のポイントとも重なる「FAF;Follow Assessment Feedback」によって、薬物治療の質は飛躍的に向上するというお考えをお持ちで、今回の改正により薬剤師にはさらなるFAFの実践が求められ、薬局の開設者はそのための体制を整える必要性が増したと述べられました。その上で2つのイノベーションである「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」について解説され、異なる価値を消費者に提供していく後者のイノベーションを開発していくことが必要であるとしました。そして最大のテーマである「薬局3.0」とは、「来て頂くだけでなく、こちらからも行く。お渡しするまでではなく、のんだ後まで。保険調剤だけではなく、介護保険・OTCも」というモデルを指し、これこそが「破壊的イノベーション」による異なる価値の創出を意味するとお話しくださいました。また「破壊的イノベーション」によって創出される物事について、顧客が利用可能な性能を獲得するまでにはある程度の時間を要するとも補足されました。

第三のアジェンダは「薬局経営を4つの視点で捉えなおす」です。健全な経営を行うためには、「財務」、「顧客」、「業務プロセス」、「学習と成長」の4つの視点で経営を捉えなおして、改善していく必要性があると述べられました。すなわち財務的には、「渡すまでではなく、のんだ後まで」フォローすることで、調剤薬局自体が水源となるように取り組んでいくこと。顧客的には、「待たせない、間違わない」という効率的な視点から、症状の安定や疾病の治癒など健康の増進に関わっていくこと。業務プロセスとしては、機械化が不可能な効率よりも効果を重視して取り組んでいくこと。そして学習と成長という視点においては、経験が活きない機械的な作業に携わるのではなく、高い専門性を発揮して生死に寄り添う経験を重ねていくことが重要であるということです。

最後に、水車小屋型薬局からの脱却のために、「薬剤師がFAFを実践して実力をつけていくこと」、「パートナーの協力を得ることで薬剤師の時間・気力・体力を創出すること」、「薬局3.0の強みと存在を知ってもらうこと」の3つのポイントを述べ、本講演を締めくくられました。

参加者からは、FAF の概念を早速業務に応用したいという意見やイノベーションの概念が興味深かったなどの意見が寄せられました。

~アンケートより~

  • 薬局のありかたが、社会のニーズ、科学技術の進歩に伴い変化してきている。そのために薬剤師も変わらなければならないと理解したため。
  • OTC販売の強化など売れ残りのロスなども心配ですが、今後は調剤専門という立ち位置では生き残りが難しくなると思います。業務体制や販売アイテムの強化、健康情報発信など、薬局に価値を感じてもらえる策を今後考えていきたいと思える内容でした。
  • 私は病院勤務ですが、門前や地域の薬局が置かれている状況を理解できたことが役に立ちました。病院も薬局と地域連携していきたいと考えています。

薬剤師支援
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