銀杏(ぎんなん)食中毒とは

1)銀杏食中毒とは

イチョウの種子である銀杏(ぎんなん)を多食すると、まれに食中毒を起こすことがあります。ぎんなんを食べる習慣がある日本(症例報告データベースへ)、中国で食中毒が報告されています。

2)銀杏食中毒の特徴

  • 症状----重篤な場合、強直性及び間代性痙攣を伴い、意識を失うこともあります。死亡例も報告されています。
  • 中毒を起こしやすい人----小児(5歳未満)に多く、報告されている全患者の70%以上が10歳未満のこどもです。大人の場合には、かなり多量に摂取した場合に限られています。
  • 中毒量----特定できていませんが、記録によれば5〜6個程度でも中毒を起こすことがあります。その理由は中毒のメカニズムと深く関連しています。
  • 中毒が発現する時期----ぎんなんを摂取後、数時間というのがいちばん多いケ−スです。もちろんこれは摂取量、その人の栄養バランスによっても異なってきます。
  • 中毒が多発した時期----古い症例報告はないのですが、太平洋戦争前後(昭和30年代半ば頃まで)が特に患者数が多かったという集計があります。これも中毒メカニズムと関連していると思われます。しかし、現在でも年に数件の報告があります。
  • 中毒を引き起こす原因と考えられる因子----後の項目で説明しますが、この食中毒はビタミンB6の欠乏症状としての結果、現れると考えられていることから、栄養学的にビタミンB6欠乏状態あるいは潜在的にそのような状態にある場合に、ぎんなんを摂取すると、食中毒の引き金になると予想されます。つまり、戦争などで食料が十分に調達できない場合は現在の日本とは異なり、栄養のバランスがかなり崩れていたことが考えられます。
  • 中毒原因物質----ぎんなん中に含まれる4-O-methylpyridoxine(4-O-メチルピリドキシン:以下MPNと略、注:4'-methoxypyridoxineやmethoxypyridoxineと古い文献で記載されていることもある)というビタミンB 6に極めてよく似た化合物がその原因であることを当研究室で発見しました。この化合物はイチョウの他にはマメ科のある植物に微量含まれている(ただし配糖体という糖の結合した状態)ことが知られているだけで、自然界においてはきわめてまれな化合物です。
  • 中毒のメカニズム----MPNはビタミンB6の作用(生体内でアミノ酸代謝の補酵素としてさまざまな生化学反応の酵素の働きを助ける)を阻害することにより、見かけ上、ビタミンB6欠乏症状を引き起こします。この作用のうち、もっとも顕著に現れる作用のひとつとして、ぎんなん食中毒のように、中枢神経の異常興奮により引き起こされると考えられる痙攣があります。MPNは抑制性神経伝達物質の一つであるGABA(γアミノ酪酸)の生合成を阻害することにより、痙攣を誘発すると見なされています。(銀杏中毒メカニズム文献データベースへ
  • 中毒の治療----この食中毒が発症した場合、上記のようなメカニズムであることから、直ちにビタミンB6製剤(ピリドキサ−ルリン酸)を投与するのがもっとも効果的であることが考えられます。事実この治療により、効果的に症状が改善された例があります。
  • ぎんなん中毒であることの証明方法----ぎんなん中毒と考えられる中毒症状に対し、上記のような治療法で症状が改善されたとしても、それが科学的にぎんなんが原因であったかどうかはわかりません。しかし、当研究室ではぎんなんが原因であるかどうかを主に、血清の分析を行うことで証明することができる体制にあります。
  • 血清等の分析に関するお願い!-----学術研究を目的としたものに限り,御相談させていただきます.これまでの分析実績については当ホームページ内の文献データベースを御参照ください. 
  • 現在は、代謝物についても解析をしております。尿検体なども分析可能ですので、御相談ください。
  • wadakg@hoku-iryo-u.ac.jp  まで御連絡ください。なお、メール送信後、1週間たっても返事がない場合は再度御連絡ください。プロバイダーによりこちらからの返信が届かないことがまれにあります。(yahoo, Gmail など)
  • 注意(1)----中毒が起きたとき、素人判断で対処するのは危険を伴います。ただし、中毒を起こした前後の患者の行動をできるだけ正確に伝えることができる人がそばにいる場合は、医療関係者に直ちに正確な情報を提供し、指示を受け、冷静に対処することがもっとも最善の手段であると思います。
  • 注意(2)----先に述べたように、特に小児に起こりやすい中毒なので、子供に与えるときは個数を制限したほうが安全です。5歳未満は与えない方がよいと思います.子供はあればあるだけ食べることがよくあります。
  • 注意(3)----薬物治療を受けている人で、ビタミンB6欠乏症状を引き起こす可能性があると注意されている人、抗生物質を連用して腸内細菌叢が正常ではないと考えられる場合(ビタミンB6は腸内細菌が生合成しているので、正常な腸内細菌叢であればほとんど欠乏症状が現れることはない)は、ぎんなんを摂取するのは控えたほうがいいと思います。
  • 補足----ぎんなん食中毒はすでに全国的な中毒に関するデ−タベ−スに登録されているため、中毒情報センタ−に問い合わせることで迅速な指示を受けることができます。
  • ぎんなん中毒に関する情報----全国規模のメ−リングリストのデ−タベ−スに登録され、公開されています。ご参照ください。

    (最終更新日:2010.6.17)

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