本連携取組の目的を達成するため、連携大学教職員に対する事業と学生に対する事業を実施する。

学生に対する事業

 歯学部学生に対する事業として、@一般医学教育に関する授業を充実させる。歯学部では一般医学を専門とする専任教員は歯学専門教員に比べて少ないが、各大学に所属する一般医学教員が協力して授業を実施し、各大学が専任教員として確保していない領域については医学部教員によって授業を実施する。また、A現在昭和大学が中心となって北海道医療大学、岩手医科大学、福岡歯科大学で実施している第6学年学生に対する短期学外研修を拡充実施し、連携校間の学生交流を進める。
 医学部学生に対する事業として、B福岡大学医学部歯科・口腔外科の専任教員と協力して連携校の教員が口腔医学に関する授業を行い、歯科・口腔外科に関する授業の充実を図るとともに、C福岡歯科大学が併設する介護老人保健施設サンシャインシティ、社会福祉法人「学而会」特別養護老人ホームサンシャインプラザ等の介護施設を利用した介護実習の場を提供し、口腔ケアを学習目標に入れた施設実習を実施する。実習の実施にあたっては歯学部の教員が協力し、学生指導を行う。昭和大学、岩手医科大学においても同様な取組を行う。介護施設への学生配置を可能にするため、福岡地区(福岡歯科大学)および東京地区(配備大学未定)に大型バスを配備する。
 地域的に離れた大学間での合同授業を実施するために、高速の通信網を介した双方向性テレビ会議システムを整備し、各連携大学の物理的距離、担当教員の物理的負担に対する問題をクリアする。
 また、将来的な事業としてD医学部・歯学部カリキュラムに共通する基礎医学系専門科目(生命科学)および社会医学系専門科目を共同で実施する。こうした事業を行うことによって、医・歯学部が協力して「口腔医学」プログラムを作成する。また、設置形態の違いに応じてプログラムを最適化し、連携大学の学生が受講できるようにする。

教職員に対する事業

 @取組担当者を対象として海外の大学に合同調査チームを派遣し、口腔医学に関する教育状況を調査研究する。A連携大学教職員が参加する「口腔医学」や「医学・歯学教育体制のあり方」に関する公開シンポジウムおよび討論会を連携事業として、また口腔科学会等の学術団体との共催事業として東京と福岡で実施する。また、取組最終年を目標に中間報告を兼ねた連携取組の国際シンポジウムを福岡で開催する。B連携校間の医歯連携を緊密化する基盤整備事業として、連携大学間で非常勤講師委嘱・派遣、専任教職員の短期研修派遣等の人事交流を活発化させる。C各大学担当教職員を対象として連携校が協力してFDおよびSDワークショップを開催し、教育・職務技能の向上を図る。D各大学の学長、学部長等で構成する「連携大学学長・学部長会議」を開催し、口腔医学の確立に向けた教育体制の環境整備を行う。E各大学の担当代表者による連絡会議を開催し、プログラムの深化を図る。また、テレビ会議等を利用して、毎月1回定例担当者会議および連携事務会議を開催し、担当教職員の一体化を図る。

その他の事業

 高齢者介護における口腔ケアを医療活動の一つとして実施できる医療者を養成するための環境整備として、連携大学が属する地域の協力介護施設を結ぶ教育ネットワークを作り、医学部・歯学部学生のそれら協力介護施設での口腔ケア・全身ケア実習が円滑に実施できる環境を作る。
 「口腔医学」、「医学・歯学教育体制のあり方」等について広く社会に情報を発信し、社会ニーズの顕在化を図る。  文部科学省、厚生労働省等の関係行政機関、医師会、歯科医師会を始めとする関係諸団体と綿密な意見交換を行い、将来的な医学部、歯学部の設置形態のあり方、一元的な医学・歯学教育の実施、学部名・診療科名の名称変更等について検討する。

 本連携取組の実施は代表校である福岡歯科大学と福岡大学、九州歯科大学、昭和大学、鶴見大学、神奈川歯科大学、岩手医科大学、北海道医療大学の8大学が連携して実施する。本連携取組の「口腔医学の確立」に関する実務的な運営は各大学の担当教員で構成される「担当者会議」で行い、実施主体は各大学に設置されている教務機関(学務委員会、教務委員会、学事委員会等)とする。担当教員は連携大学の専任教員から登録し、授業の実施、FD事業の企画・開催、合同シンポジウムの開催、合同チームの研修派遣などの実務的な運営を行い、必要な事項については審議事項として各連携校の代表担当者が各大学の定める審議機関に提案する。学部設置形態の検討、名称変更、一体的な医学歯学教育等、将来的な目標に対しては連携大学の学長・学部長等で構成する「連携大学学長・学部長会議」で協議する。その他の教育研究調査はそれぞれの大学で実施する。総括的な事務機能は代表校である福岡歯科大学におき、同大学連携企画室(福岡歯科大学企画課内に設置)で取り纏める。学生登録、履修登録、プログラムの実施などに関する具体的な事務は各大学の担当事務局で行う。各大学の担当職員で構成する「連携事務会議」によって、本連携取組に関する事務処理を行い、SD事業の企画を行う。
 各大学から選出された教職員による「口腔医学自己点検・評価委員会」を設置し、学生や担当教職員、介護施設職員等に対するアンケート等の自己点検・評価を行い、結果を各大学・実施担当者にフィードバックする。また、外部評価に対する資料等を作成する。

 本連携事業に参加する8大学のうち、歯学部の単科大学が3校、医学部または歯学部を持つ大学が3校、医学部と歯学部の両学部を持つ大学が2校である。歯学部においては一般医学教育に関する専任教員の確保は限界があり、口腔医学の確立を図る上でもこの領域の充実が必要となっている。本連携取組は歯学部における一般医学担当教員の効率的な活用を図ることで、連携大学の教育内容を充実させることができる。また、福岡歯科大学が併設している介護老人保健施設、介護老人福祉施設等を安定的に利用することによって、口腔ケアの実践を通して口腔医学を医学教育の中に織り込み、医療における口腔領域の重要性を認識できるようにする。本連携事業を共同で実施する本学併設の介護老人保健施設サンシャインシティおよび社会福祉法人「学而会」特別養護老人ホームサンシャインプラザを核とした協力施設ネットワークを福岡地区に作り、医学部・歯学部学生に対する実習受け入れ態勢を作ると共に、各大学の属する地域にそれぞれの学生の円滑な施設実習が可能となるような介護施設ネットワーク形成を働きかける。シンポジウム・討論会は公開とし広く地域からの参加を求め、内容を要旨集としてまとめ、関係者に配布するとともに、連携校のホームページ等を利用して一般公開する。
 実施する口腔医学教育プログラムに適した歯学部および診療科の名称変更(口腔医学部・口腔科)、一元的な医学・歯学教育の実施についても検討し、検討内容を広く社会に発信し、社会からのフィードバックを得るとともに、将来の社会構造の変化や患者ニーズの変化にも対応できる合理的な医師・歯科医師育成教育のフレームを提言する。