オバクノン(obakunone,obacunone)

1)オバクノン(obakunoneまたはobacunone)とは

キハダ(学名:Phellodendoron amurense Ruprecht)またはその他同族植物(ミカン科;Rutaceae)の周皮を除いた樹皮(オウバク:第十三改正日本薬局方収載生薬の一つ)で、健胃薬、止瀉薬(ししゃやく:下痢を抑える)として適用される生薬に含まれる苦味成分の1種。構造上の分類では、トリテルペン(基本骨格の炭素数が30個のテルペノイド系化合物)。オウバクに多く含まれる。

2)オバクノンの特徴

オバクノンはリモノイドの1種であり、α,β-不飽和カルボニル、ラクトン環、フラン環、エポキシドの官能基を持つトリテルペン。苦味成分として知られ、アグリコン(糖が結合していない)や配糖体(オバクノンに糖が結合したもの)の状態で、ミカン科の植物(かんきつ類)に含まれている。

3)オバクノンの機能性

オバクノンなどリモノイドは苦味成分のため、従来はかんきつ類果汁飲料から工業的に除去され(商品価値を高めるため:苦い味のジュースは敬遠されやすい)ていた。(文献1)

一方、リモノイドは昆虫などに対し、摂食忌避作用があることから、天然物による農薬としての利用が報告されている。(文献2)

上記の理由から、リモノイドのほ乳動物に対する生理活性の研究は極めて少なかった。90年前後から、リモノイドのほ乳動物に対する生理活性の研究が次第に報告されるようになり、現在のところ、クロラロース-ウレタン麻酔時の睡眠時間短縮作用(文献3)、解毒代謝酵素の一つであるGST(glutathione S-transferase: グルタチオンS-トランスフェラーゼ)の活性化(文献4および5)、実験的化学発がんに対する腫瘍発生率の軽減(文献4及び5)などが報告されている。

文献1:S.Hasegawa, et al., J. Agric. Food Chem., 28,922(1980).

文献2:J.A.Kloche, et al., Ent. Exp. & Appl., 32,299(1982); M. Serit, et al., Agric. Biol. Chem., 55, 2381(1991).

文献3:Wada, K., et al., Chem. Pharm. Bull., 38,2332(1990);Wada, K., et al., Chem. Pharm. Bull., 40,3079(1992).

文献4:L.K.T. Lam, et al., Nutrition and Cancer, 12,43(1989); L.K.T. Lam, et al., J. Agric. Food Chem., 37, 878(1989).

文献5:田中卓二、川端邦裕、和田啓爾ほか、日本癌学会第57回総会Vol.89, Supplement, p92(1998).

(最終更新日:1999.3.1)

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