文部科学省「平成16年度現代的教育ニーズ取組支援プログラム」
地域への健康支援と融合・連携した学生教育

実施報告

@ 平成16年度は「歯の健康プラザ」を舞台に下記に示すような活動を推進した。

まず住民への周知とニーズの汲み上げのために、学生が町内をまわり、住民と接することにより、本施設の意図するところを説明した。これは、学生にとって「接遇」の絶好の機会である。また、成人歯科健診(歯科検診+口腔保健指導)の拠点として、歯科健診専用のユニットを備えたことにより、標準化した歯科健診が可能となり、地域住民の口腔の健康に貢献しているとともに、健康日本21の目標の達成を目指した。また住民と大学の学生、教員との交流を深めるために、上記の施設において多様な活動(歯と口の健康教室、妊婦を対象にした母親教室、模擬患者講習会、歯と口の健康をテーマにした演劇、こころの健康相談など)を展開した。学生は習う立場であるとともに、教える立場も経験でき、医療人として患者とのコミュニケーション能力の育成に大いに役立っている。

A 平成17年度以降の展開

(1) 成人歯科健診、歯科保健教育

地域住民の口腔状況を把握し、健康増進を図る目的で年間約1,700名の歯・口腔の健診を行った。当別町では健康推進事業「みんなでつくろう健康とうべつ」を行っており、その1分野「歯の健康」に貢献し、報告書等の資料作成、情報提供を行い、町民に還元した。また健康手帳を配布し、歯科衛生士による教育活動の徹底により、町民の口腔保健に対する意識は確実に高まった。

(2) 口腔疾患を持つ患者の掘り起こし

「歯の健康プラザ」での口腔保健事業推進の資料とするために学生が当別町内を戸別訪問し聞き取り調査を行うことにより、住民のニーズの把握に努めた。

(3) 学生教育への住民参加

医療面接の授業を充実させるために20名以上の模擬患者(SP)を養成した。SPを活用することによりリアリティのある医療人教育を行い、コミュニケーション能力、問題解決能力の育成を図った。

(4) 歯学部低学年学生の総合学習の場

将来の口腔保健の充実を図るためには子供達への教育が必須であり、そのために、「小学生1日歯医者さん体験」「病院探検隊」「6474(むし歯なし)キャンペーン」などを実施した。子供達を教育することにより、保護者への影響もあり、地域住民のデンタルIQの向上に資することができた。また、各イベントには本学学生が参加し、子供達と触れ合う機会を得、口腔保健教育の重要性を体感できた。

(5) 歯科学生の学外臨床実習の場

歯学部4年生の小児歯科実習の一環として本年度より当別町内の全保育所の園児を対象に視覚素材等を用いた口腔保健教育と個別口腔保健指導を行った。すべての4年生の歯学生が小児と触れあい、また、園児にとっても個別に指導を受け、歯と口腔の健康について意識する機会となった。

(6) 口腔保健に関するボランティア活動

プレイハウス(小学生の一時預かり施設)に歯学部学生、歯科衛生士専門学校生徒らが参加して、小学生と親交を深めつつ、視覚素材等を用いた口腔保健教育と個別口腔保健指導を行った。

(7) 在宅医療訪問相談

歯の健康プラザのスタッフが戸別訪問し、口腔ケアを実施するとともに、町内の病院、老人会などで講演などをする機会を増やし、高齢者の口腔の健康管理の重要性を訴えた。

(8) こころの健康相談

当別町では自殺件数が多く、「こころの健康相談」を看護福祉学部教員の指導のもとに大学院生が毎週水曜日に行うことにより地域の精神保健に寄与した。

(9) 住民の交流、あるいは地域や本学の活用を目的として、「食」あるいは「健康」をテーマにした講習会

成人を対象に口腔保健と栄養・食生活に対する意識を高めるために「食」をテーマに様々なイベント(ハーブティー教室、チーズ教室、蕎麦打ち教室、マタニティー教室など)を開催した。イベントを通じた口腔保健教育により、その重要性を認知し、住民のニーズを発掘することができた。また、救急救命講習会では町民だけでなく本学学生も多数参加し、町との交流のみならず、医療人となるためのモチベーションを高めるのに有用であった。