広大な医療圏を抱える北海道では、地域医療崩壊の危機を迎えている。その理由は、医療人の不足と偏在(特に、絶対的な医師不足)が起きていることが挙げられ、結果として一層の地域医療危機に追い込まれようとしている。更に、北海道全体の不況が重なることにより、過疎化に拍車がかかり、地域の活力が失われる状態を招きつつある。この状況にあっては、地域再生と地域政策の今日的課題を発見し、解決する能力を持つ多分野の専門知識を有する高度専門職業人、及び研究者の育成により、医療を中心とした地域活性化のための対策は急務である。医療はメディカルスタッフのみで行われるものではなく、情報・工学などの技術的な支援は医療システムの中では不可欠であり、また、医療にかかわる工学・情報・経営には充実した医療教育が必要である。そのため、北海道内の大学の連携、行政との協力関係のもとに高度な教育を実践することによって諸問題を解決し、地域の医療を発展させる一助となることができると期待される。
 一方、高齢化に伴う要介護者の増加、生活習慣病罹患率の上昇、疾病の多様化・複合化、医療における人権への更なる配慮の必要性、医療の質保証など、現代の健康問題には疾病の診療や予防にとどまらない、幅広い医療活動が求められている。
 地域医療の充実には、多職種による連携が不可欠であり、幅広い保健医療専門職、関連の専門職者(医工学、医療経営、医療情報)の存在が必要である。北海道内の大学が連携し、行政の協力を得て高等教育を実践することで解決を試み、発展のための一助となることができると期待される。
本取組は、道内5大学の共同並びに地域との連携によって教育・研究を推進し、その成果を還元する地域貢献(特に地域保健医療に焦点をあてて)をねらいとするものである。この目的のために、地域の課題解決を目指す大学院の教育プログラムを構築し、各大学の大学院修士課程を経て、医療を実践できる人材育成を目指す。大学院修了者はマルチスキルを備えた職業人としての能力を有し、将来的に地域医療の場で実践力を発揮しうる人材特性が描かれる。
 本教育プログラムを受講することにより、医療に関する問題意識を共有し共通の言葉で討論できることになり、異分野の有機的連携が図られる。また、多分野の知識習得者は医療分野のみならず複雑化する社会情況に対応しうる人材としてベンチャー企業等の開拓につながることも期待される。更に、看護職者あるいは理学療法士・作業療法士などのリハビリテーション専門職にとっては、経営についての専門知識を得るなど、将来地域で独立した業務を行うための基盤作りにつながる。
 以上のように本教育プログラムは、北海道の将来を展望し、地域活性化に結び付く取組であり、地域の産業等の発展に貢献できる人材を育成する計画になる。

 

第一段階は地域医療共通プログラムを構築し、道内5大学が教育理念を共有し、かつ各大学の大学院修士課程の特性を活かしつつ、地域に貢献しうる人材を育成する。さらに大学院教育が担う課題を把握したうえで、次の段階として共同大学院を設立する。共同大学院課程では、総合力を持つ新しい人材育成へと発展させる計画である。本教育プログラムを修了した学生は更に、大学院博士課程に進学し先端研究、もしくはMBA(経営学修士専門職大学院)への進学の道も開かれる。北海道の将来を見据え、活力ある地域を作っていくための取組であり、地域の産業等の発展に貢献できる人材を育成する計画になる。