がん看護コース研修
緩和ケアリソースナース養成プログラム研修会

 がん看護コース研修会 緩和ケアリソースナース養成プログラム研修会 第4回プログラムは、平成28年11月19日(土)に、「認知症のある高齢がん患者の症状マネジメント」と題し開催しました。
 日本は超高齢社会に突入し、がん診療においてもがん患者の高齢化とそれにともなう認知症者の増加から医療者の困難や倫理的ジレンマが報告されています。「認知症」「高齢がん患者」というキーワードは、はっきりとしたエビデンスが少なく、まだまだニッチなテーマではありますが、実際に看護する機会は増加しています。現在、手探りの中での臨床実践をしている看護師がこの困難に向き合う糸口を見つけることを目的として開催されました。そこで、講師には、公益社団法人日本看護協会看護研修学校 認定看護師教育課程 認知症看護学科で専任講師をされている島橋誠先生と国立がん研究センター東病院精神腫瘍科/先端医療開発センター 精神腫瘍学開発分野の小川朝生先生をお招きして、認知症の基本的知識とともに具体的な対応、高齢者と特徴とそれに伴うがん診療上の課題と対応についてご講演いただきました。国内におけるがん医療の体制や国内外で発表されている高齢がん患者のデータから認知症のある高齢がん患者の現状を知ることができました。さらに認知症の基本的知識を整理していただき、具体的な診療場面、意思決定支援について講演いただきました。まとめとして、「認知症」という枠組みで患者の能力を限定しがちであるが、記憶障害や実行機能障害でもできることに目を向けること、それにより認知症のある高齢がん患者へのケアが創造されること、ひいてはそのケアの質こそが患者の自律と尊厳への支援につながることを再確認することができました。
 参加者はCNSや大学院生だけでなく臨床の看護師、教員の参加もありました。精神看護専門看護師、老人看護専門看護師にも参加をつのり「認知症のある高齢がん患者」に起きている状況を多角的かつ現実的に捉え考えていくことができる機会となりました。参加者の満足度も高く「認知症のある患者さんの苦痛を評価する視点や意思決定支援のプロセスを学ぶことができた」「明日からのケアに役立つ」との意見がありました。講義については「講師一人に1時間では足りない」「もっと聞きたかった」という意見もあり、参加者のニーズに応えられる内容とするために時間配分や内容について課題が残されました。次回は、焦点を絞り、2回に分けるなど、企画の検討もしていきたいと考えています。今回の研修会を通して「認知症だから」という枠組みに縛られ、ケアの可能性を看護師自ら狭めていることに気付くことができました。「認知症だけども」に切り替え、私たち看護師ができることを丁寧に模索することでケアの可能性が広がることを忘れずに今後もケアの質の向上を目指したいと思います。
会場写真 会場写真

〜アンケートより〜
  • 認知症の患者さんを多くみていながら、基本的な知識、理解が不足していることがわかった。この内容を病院内の看護師と共有したいと思った。
  • がんと高齢者という視点で意思決定支援などがとくに学び深かった。
  • 自分の職場でも認知症の方が入院しているので、治療や普段の関わりなど自分の普段の対応など振り返る機会になった。
  • 認知症にある人に何が起きているのかをまず認識することができた。