がん看護コース研修
緩和ケアリソースナース養成プログラム研修会

 平成27年度がんプロフェッショナル養成基盤推進プランの第2回目の講演は、「がん患者のセクシャリティを考えたケア」をテーマとして、渡邊知映先生をお迎えしました。 「セクシャリティは特別なことではない」との言葉をかわきりに、参加者の熱意と先生の温かさに包まれて講演が始まりました。 渡邊先生は、上智大学 総合人間科学部 看護学科 准教授として活躍されている中、昭和大学病院でも外来業務を兼務しており教育と臨床の二つの立場から看護を実践しておられます。 大変ご多忙の中、さらに爆弾低気圧が近づく中ではありましたが、今回、講演会の合間を縫ってお招きすることができました。
 現在、日本におけるがんサバイバーは増加しています。 背景には、がん検診の受診率、検出率、早期診断の進歩、向上により若年者のがんサバイバーが増加していること、それに加え、がん治療の技術、医薬品の開発により5年生存率が上昇していることが挙げられます。 がん治療が多様化し、これまで以上にがんと共に生活をする期間が長期化していることで新たな課題も指摘され始めています。 そのひとつが、がん治療に伴うセクシャリティに関する支援です。 化学療法による妊孕性低下の可能性、手術後生殖器、付属器周辺の形態の変化や生理学的変化によってパートナーとの関係性や家族関係に大きな影響を与えることもしばしば見られています。 患者とその家族に任せるのではなく、一人ひとりの患者のニーズをアセスメントし、患者に合わせた必要な情報量をタイミングよく伝えることで、 看護師ががん医療と生殖医療の橋渡しを行っていくことが可能であると学ぶことができました。
 今回は、札幌市内の病院に勤務している数名の看護師にもご参加いただくことができました。 参加の動機を伺うと若年性のがん患者への対応に苦慮する場面にであったことや、具体的な支援、声のかけ方やタイミングなどを知りたいといった実践的示唆を期待され参加されておりました。 講演会参加者からは「無意識のうちにそういう話題を避けていたが、医療者としても自分の価値を振り返りながら、今後のケアに活かしていきたい」、 「セクシャリティ=性だけでなく、人生そのものを考えたケアについて学ぶことができた」といった感想が寄せられ、 大切とわかっていても難しいセクシャリティへのケアを身近に感じることができたのではないかと思います。 さらに、「治療前にこの(セクシャリティ)ことを持ち出すと医師に「よけいなことを」という認識をもたれる」といった感想もありました。 看護師だけでなくがん医療に携わる医療者それぞれの価値の違いを踏まえながら協働していけるようなシステムを築くためにも日々のCNSの活動が大切であると感じました。
会場写真 会場写真

〜アンケートより〜
  • 具体的でわかりやすかった。考える場をもちながらすすめて下さってよかった。
  • 30代、40代の女性の、特にがん病期が進行したがん患者の看護をする機会が続いていて、今回は研修会で渡辺先生のお話をきけた事は、大変よかったです。セクシャリティ=性だけでなく、人生そのものを考えたケアについて学ぶことができました。
  • 大切だとは思いつつ、向きあえていなかった分野であることに気づけました。周囲もまきこんでとり組んでいきたいと思います。
  • 実践内容を聴講でき、すごく良かった。目的意識づけができた。
  • よく耳にするが、ちゃんと考えたことや学んだことがなかったので、目からウロコでした。
  • 今までセクシャリティの視点でケアを考えたことがほとんどなく、とても興味深く聞かせて頂きました。今まで自分の中で“特別”なものとして考えていたような気もします。自分の中での価値観もふり返りながら、今後ケアを行っていきたいと思います。