第3回がん看護コメディカル研修 緩和ケアリソースナース養成プログラム研修会を開催

会場写真
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 平成26年度 文部科学省選定 がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン がん看護コースの第4回目の事業は、「遺伝性腫瘍の患者と家族をサポートする看護」をテーマに、村上好恵先生をお迎えし、講演会を開催しました。
 村上先生は、東邦大学で成人看護学教授として教鞭をとられている一方で、聖路加国際病院遺伝診療部や、東邦大学医療センター大森病院乳腺外科外来で実践家としてもご活躍されている方です。
 遺伝性腫瘍の患者数は、がん患者全体の5〜10%を占めるといわれており、代表的なものとしてLynch症候群や、遺伝性乳癌・卵巣癌症候群などがあります。2013年にA・ジョリー氏が、がん予防措置のために両乳房を切除したことで話題となりました。このような患者は、自分のがん治療とともに他の家族成員に対してのスクリーニングや検査、治療が必要になることもあり、本人のみならず家族にも大きな衝撃を与えることがあります。
 講演は、まず遺伝性腫瘍についての基本的知識を整理し、患者と家族理解のポイントについて事例を用いながら具体的に解説を交えて進行していきました。遺伝性腫瘍の特徴として、若年での発症、多重・多発がんであること、家系内に特定のがんの発症があげられます。この3つの特徴は、患者の病歴と生活歴を聞く際に知ることができるため、今後の実践に活かしていきたいと感じました。また、遺伝性腫瘍の患者や家族が懸念する、遺伝する確立や遺伝する割合に対しても、具体的な数値の読み解き方や、誤解のない説明の仕方を解説していただき、これまでの自身の知識不足を補うことで、遺伝性腫瘍患者に対する理解が深められたと感じております。一番難しいと感じていたのは、遺伝性疾患の罪責感です。これは、患者の親は、子供に遺伝子を受け継がせがんにしてしまったという罪責感を抱き、患者の兄弟姉妹は、自分だけが助かってしまったという生存者の立場としての罪責感を抱くというものです。このようなそれぞれの罪責感に対して、精神的影響やうつの早期診断、適応障害の程度などにも目をむけ、カウンセリングをしていくことが必要であり、さまざまな家族に対して複雑なアプローチが必要である家族システムを捉える重要性を再認識しました。
 終了後のアンケートでは、参加者23名全員が「今回の研修は役に立った」と回答し、満足度が非常に高い講演会となりました。役に立った理由について「明日から、患者や家族にどのように声をかけてよいかわかった」というご意見や、「遺伝外来につく時、対象者が何に迷い、困っているのかにまず向き合えばよいことがわかった」「家族関係へのアプローチなど、これまで無かった分析の視点を聴くことができた」というご意見が寄せられました。
 村上先生は、多くの看護師が少しでも遺伝性腫瘍に関心もってくれることで、遺伝性腫瘍患者が自身の身を守ったり、マネジメントしたり、家族を守ることができると話されました。一見、日常業務からかけ離れていると感じやすい分野がより身近に感じられ、新たな看護師の役割を考える講演会となりました。

〜アンケートより〜
  • もっと専門的で、日常の業務をかけ離れているのではないかと思ったが、そんな事はなく、考えるきっかけとなることが多かった。今、関わっている患者さんに対してもう少し調べてみようという気になったし、遺伝診療 = 情報提供 ということをはじめて知り、勉強になった。看護の基本となることだった。
  • 新しい知識を得ることができ、大変勉強になりました。興味深い分野であり、勉強していきたいと感じています。
  • 事例をまじえながらの話しでわかりやすかったです。
  • 件数があまりないため、関わるたびにどのように関わればいいのかと思っていたので、とても勉強になりました。
  • 明日からの患者さんへの対応に即、応用できる。