研究実績
照光 真
核磁気共鳴学を応用した疼痛と神経科学、神経再生治療の臨床応用
吉本 裕代
脳機能発達を視点としたストレス適応能力に関する神経科学的研究、安全な麻酔管理法開発
金澤 香
吸入麻酔薬の脳虚血に対する保護作用、遺伝子多型に関する解析
大桶 華子
情動の脳波フラクタル解析、自律神経と血流
岩本 理恵
吸入麻酔薬Xeキセノンの溶解による静脈内鎮静法の可能性
研究概要
臨床からin vtroまで、神経科学を通した歯科麻酔科学へ
当講座の研究は、in vitroから患者さんへの臨床応用まで一連の繋がりをもって進められている。三叉神経の末梢における神経障害に対し、核磁気共鳴学を応用した形態解析や水分子の拡散を計測した画像法と神経線維の機能解析は、既に臨床応用を可能にしている。さらに慢性疼痛における中枢性感作を検索するため、脳活動がどのように様々な脳部位同士が同期して活動しているか、また興奮性神経伝達物質や脳の代謝産物をヒトで非侵襲的に計測している。感情の快不快を脳波のフラクタル解析から客観的に定量化する試みが行われている。長岡科学技術大学で開発されたフラクタル解析アルゴリズムを用いて歯科治療に関連した画像と音声のバーチャル歯科診療時のデータを取得している。これにより、歯科治療恐怖や不安の客観的指標への臨床応用が可能となるだろう。変形性顎関節症における慢性疼痛の患者群には、特有の遺伝子多型が認められるだろうか?変形性顎関節症には炎症性サイトカインが深く関与しているため、炎症の初期に産生されるIL-1に関する遺伝子多型を国内多施設で検索した。IL-1の活性や抑制に関連する遺伝子多型は、海外での報告とは異なった結果が認められた。肥満患者に対する全身麻酔、人工呼吸管理において換気効率のよい体位を開発した。これにより安全な全身麻酔管理を可能にしている。
一方、細胞培養や動物実験では、脳のグリア細胞のひとつアストロサイトがどのようにアストロサイト同士の信号伝達を行っているかをCaイメージングを用いて解明している。アストロサイトは神経の活動性を制御していることから、上述した中枢性感作に関わっていることは先行研究から示されている。神経-アストロサイト-血管の関係に加えて、アストロサイト間の信号伝達の信号伝達メカニズムが神経活動調節に果たす役割を明らかにしてゆきたい。また、口腔顔面領域の自律神経活動と血流の計測による実験系も立ち上げている。口腔顔面領域の機能の変化と自律神経系と血流の変調を検索することを可能にするだろう。