生命基礎科学(守田 玲菜)

研究実績

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研究概要

1.異所性発現型嗅神経受容体による癌幹細胞維持機構の解析

先行研究において、大腸癌幹細胞に高発現するolfactory receptor, family 7, subfamily C, member 1 (OR7C1)を新規癌抗原として同定した(Morita R, et al. Clin Can res 2016:22; 3298-3309)。この論文の中で、外科材料による免疫染色の結果からOR7C1の発現が強いほど予後不良であり、さらに、OR7C1を認識する細胞傷害性T細胞は癌幹細胞を認識し攻撃することも確認した。

同定したOR7C1を含む嗅神経受容体(OR)は、嗅覚ニューロンのみに発現しているわけではなく、異所性、すなわち精巣、肺、腸、皮膚、心臓などの人体のさまざまな組織に広く分布している。さらに、近年では、先に示した我々の報告のほかにも、様々な癌組織にも発現していることが知られてきており、前立腺癌で発現している異所性ORは尿中バイオマーカーになりうるとの報告もある(Maßberg D and Hatt H. Physiol Rev 2018: 98; 1739 –1763)。

 

異所性OR の機能は細胞間認識、遊走、増殖、アポトーシスなどが想定されているが、OR7C1も含め異所性ORのほとんどについて、よくわかっていない。また、異所性ORの詳細な細胞内シグナル伝達も研究途上であり、興味深いことに、嗅覚ニューロンのORによって活性化される標準的なシグナル伝達経路に加えて、代替経路が知られてきている(Wu C,et al. Int J Biochem Cell Biol. 2015: 64; 75-80)。過去に行った我々の予備実験では、OR7C1過剰発現細胞株において、ウエスタンブロット法によりリン酸化型AKTが亢進していることがわかっているが、その詳細な経路の解析にまで至っていない。

2.特発性再生不良性貧血のHLA拘束性抗原分子の探索

自己免疫疾患の病態を完全に理解するには、免疫細胞が「実際に何を認識しているのか」を同定することが重要である。免疫システムは、過去に遭遇した標的を記憶している。一般に、T 細胞がどのような抗原を認識しているのか、リアルタイムかつダイレクトに追うことは非常に難しく、特に特発性再生不良性貧血のような解析するために十分な抗原を患者検体から得られない疾患では困難を極めるが、特発性再生不良性貧血病態の解明のためには重要であり、最適な同定方法を模索し、探索する。