認知症高齢者の生活世界の解明と
それに依拠した看護方法の開発と評価

平成19年度

本研究課題では、看護学・社会学・文化人類学の立場から、認知症高齢者の行動について学際的に探求する。

  • 看護学の立場から、以下の3つの方法によって研究課題を深める。1)意味が解明されていない諸行動、特に、彼らの会話、こする行動やさわる行動などについて、認知症専門病棟やグループホームなどでの参加観察を行う。参加観察の施設は、最初2カ所を選定する。認知症の進行レベルに従った上記の行動の変化を追う。2)これまでの研究で明らかになっている行動の意味に基づいて、看護介入を行い、行動の変容の有無とその変容の性質を観察する。3)地域に暮らす認知症高齢者の食行動の実態を把握するために、文献検討を中心に行う。
  • 社会学の立場から、「認知症をめぐる会話行動上のコンフリクトを緩和するための社会学的デザイン」をテーマに、平成19年度は、認知症ケアにおける「会話」「コミュニケーション」の問題系を文献検討により整理し、そこに会話分析やフレーム・アナリシスなど社会学的方法論を応用する可能性を探る。
  • 文化人類学の立場から、従来の認知症研究の再検討に基づき、認知症研究における調査の方法論的問題について取り組む。
平成20年度
  • 看護学の立場から、1)平成19年度の参加観察を継続しつつ、データの解釈を行う。解釈によって、たとえば認知症のより軽度の人の観察、あるいは在宅で生活している認知症の人などのさらなる観察が必要となることが考えられるため、新たに必要な観察が可能な場所2カ所程度の選定を行う。2)平成19年度の看護介入を継続し、行動の変容の有無と性質の観察を継続する。3)食行動の観察基準を作成し、アセスメントの方法の検討を行う。
  • 社会学の立場から、参与観察・録音録画分析・聞き取り・質問紙調査により、軽度から中等度の認知症患者と介護者(家族も含む)の会話行動上のコンフリクトの基本構造の仮説を構築する。
  • 文化人類学の立場から、国内外における認知症に関する人類学的研究のサーベイを行い、認知症の行動研究における分析枠組みや概念設定の問題について取り組む。
平成21年度
  • 看護学の立場から、1)これまでの観察で得られたデータから、不明であった行動の意味を解釈する。意味に基づいて、前年度2)のように当初の観察場所での看護介入を開始する。2)これまでの看護介入の中間評価を行い、修正が必要な場合は介入方法を変更して介入を継続する。3)地域に暮らす認知症高齢者の食行動の実態を調査する。
  • 社会学の立場から、認知症ケアの成功例とされる実践活動の参与観察・録音録画分析・聞き取り等を通して、認知症をめぐる会話行動上のコンフリクト構造の仮説を精緻化する。
  • 文化人類学の立場から、認知症の行動研究におけるマクロ(政治経済、法や倫理)な視点と、患者自身の経験に焦点を置くミクロな視点との接合に関する理論的問題を検討するとともに、阿保、薄井、鹿内による具体的調査データの分析に参加する。
平成22年度
  • 看護学の立場から、1)実施されている看護介入の中間評価を行い、修正が必要な場合は介入方法を変更して介入を継続する。2)意味が明らかになっている行動への看護介入の効果を評価する。3)グループホームや施設における食行動の実態を把握するために調査を行う。
  • 社会学の立場から、会話行動上のコンフリクト構造の仮説から認知症施設および在宅におけるケアの実践指針を導出し、それを実際の介護場面に応用して、その有効性・妥当性を検証する。
  • 文化人類学の立場から、認知症のケア・プログラムの構築において検討すべき文化的要因に関する考察に取り組むとともに、阿保、薄井、鹿内による調査研究に共同参加する。
平成23年度
  • 看護学の立場から、1)と2)のまとめを行い、認知症高齢者の生活世界の解明とそれに依拠した有効な看護方法を明らかにする。3)生活する場(在宅・施設)による食行動の実態とその特徴から、アセスメント方法・評価基準を比較検討する。食行動における安全を保つために必要な援助方法について検討する。
  • 社会学の立場から、これまでの研究成果を総括し、「認知症をめぐる会話行動上のコンフリクトを緩和するための社会学的デザイン」を構築する。
  • 認知症のケア・プログラムの構築における理論的、実践的問題について整理を行うとともに、阿保、薄井、鹿内によるケア・プログラムの作成に共同参加する。

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