生体機能・病態学系 組織再建口腔外科学

研究実績

研究概要

1.口腔癌の悪性化進展に関する基礎的並びに臨床的研究  2.細胞間相互作用の修飾による浸潤、転移の抑制  3.細胞運動の細胞内情報伝達経路の解析  4.Betel Chewingに起因する口腔癌に関する研究  5.ビリルビン着色歯に関する研究  6.生体材料に関する基礎的、臨床的研究  7.骨誘導蛋白質(BMP)を用いた骨形成に関する基礎的研究  8.唾液腺腫瘍に関する基礎的並びに臨床的研究  9.顎関節疾患に関する基礎的、臨床的研究

 本講座の研究は、口腔の機能と形態をよりよく維持するという観点から口腔癌と、口腔の形態並びに機能修復に関する研究をおもに行っている。口腔癌については、基礎的研究として、癌細胞の悪性化進展機序について各種サイトカインのオートクリン、パラクリン作用による進展化に及ぼす影響を、細胞内伝達機構との関連を含めて検討している。また抗酸化酵素を癌細胞に遺伝子導入し、活性酸素が悪性化進展に重要な役割を果たしていることを明らかにしてきた。一方、癌の浸潤、転移は、癌細胞側の因子と周囲組織との関連が重要であり、肝臓治療薬のMalotilateが血管内皮細胞の細胞間結合を強固にすることに着目し、Malotilateが癌細胞の浸潤、転移を抑制することを明らかにし、現在そのメカニズムについて研究を進めている。また発癌には癌抑制遺伝子であるp53の変異が重要な役割を果たしており、実験動物における簡便な変異の検索法の確立は癌の悪性化進展の解明には必須のこととなっていたが、変異を高感度で定量的に検出する酵母アッセイ法を確立した。臨床的研究では、東南アジアではBetel Chewingの習慣に起因する口腔癌の多発がみとめられていることに着目し、スリランカ共和国ペラデニア大学歯学部との共同研究によりBetel Chewingによる発癌機序の遺伝子レベルでの解明を現在精力的に行っている。口腔の形態ならびに機能回復に関する研究は、これまでおもに顎堤形成、人工歯根など各種人工生体材料埋入時の組織変化について行ってきた。一方顎骨に広範な骨欠損が生じた場合、骨修復が十分に行われず、治癒後に変形を残し、形態、機能の面で問題を残すことも稀ではなく、よりよい形態と機能回復の目的で、人工生体材料を用いた顎骨修復ならび骨誘導蛋白質(BMP)を用いた骨形成に関する研究を行っている。また肝障害などにより歯牙にビリルビン着色が見られることがあるが、その機序については不明な点が多く、LECラットを用い、その機序を明らかにすると共に、微量のビリルビン測定法の開発と、LECラットが実験モデルとして有用であることを明らかにするとともに、現在ヒト歯牙について着色歯の診断法の確立をめざしている。その他、唾液腺疾患、特に唾液腺腫瘍についてホルモンレセプターと組織像、腫瘍増殖との関連についての研究、顎関節の病態に関する研究などを行っている。主な研究テーマは上記の9テーマとなっている。