生体機能・病態学系 顎顔面口腔外科学

研究実績

研究概要

1.顎顔面の先天異常と発育異常に関する研究
顎変形症の治療として手術法の選択基準と術式の改良に関する臨床的研究を行っている。また、先天異常の一つとして唇顎口蓋裂の発生について形態学的および組織化学的手法を用いて基礎的研究を行い、とくに二次口蓋形成過程における癒合部上皮の挙動について詳細な検討を行っている。

2.顎関節疾患の病態解析と治療法に関する研究
顎関節運動に関わる諸因子を解析し病態の解明を試みており、これと並行して病態モデル動物による基礎的研究を行っているが、とくに下顎頭の過剰運動による顎関節の組織化学的変化を現在解明しつつある。また、関節鏡視下の診断および治療に関する臨床的研究を実施している。

3.唾液分泌異常の病態解析に関する研究
高齢化社会と共に唾液分泌異常を訴える患者が多く見受けられるようになった。そこで、治療法の開発の一助としてラット耳下腺アミラーゼ分泌における細胞骨格の関与、さらに低分子量G蛋白の分泌に対する役割について細胞生物学的な解析を行っている。

4.口腔癌の転移機構の解析と転移抑制を目的とした新しい治療法の開発
ヒト口腔癌細胞株を用いて、浸潤転移機構を検討している。最近では、宿主細胞および癌細胞自身から産生分泌されているTGF-βが癌細胞の運動能を促進しており、この運動シグナルがPKCを介していることを明らかにした。また、癌細胞の運動シグナルにPI3-Kが関与しており、浸潤性の異なる細胞を用いた研究の結果から、PI3-Kの異常が示唆された。さらに、活性酸素による癌細胞の浸潤促進を規定する因子として、Cu-ZnSOD活性が重要であり、浸潤シグナルに転写因子であるNF-kBが関与することを明らかにした。また、活性酸素が転移にも関与することを分子生物学的手法で明らかにした。サイトカイン療法による癌治療の基礎的研究として、TNF耐性因子としてendo-geneous TNFの検討を行い、耐性克服としての遺伝子治療の開発を進めている。

5.唾液腺腫瘍発生に関する研究
発癌剤によるラット顎下腺腫瘍系でその発生母地を免疫組織化学的に検討している。

6.障害者の口腔疾患治療に関する研究
近年障害者や高齢者における歯科治療のニーズが増加している。これらの患者における口腔外科的アプローチについて、その実際と各種の事項について臨床的・統計学的な研究を行っている。