プロのアナウンサーに指導して頂きました。

初回の気持ちの高まりそのままに、2回目へ早くも臨機応変なカフェ進行。

 11月最後の土曜日の午後。大学共同利用施設「ACU」研修室にて、「メディカル・カフェをつくる」の特別授業が行われました。講師は元北海道放送アナウンサー・安藤千鶴子さん。テーマは話しことばのレッスンです。本学と札幌医科大学の学生、教職員も参加できるオープンな授業としたため、ふだんは見られない参加者も加わって講義室はちょっと新鮮な雰囲気。続々集まってくる中には、なつかしの前期受講生の顔もみつけました。
トップページに戻る
情景が目に浮かぶ、ことばの力に圧倒されました。 写真1
 今日の特別授業は3部構成。最初は「朗読」からスタートです。「“話す”ということは“聞く”ことから始まります」という安藤さんが、その意味を実感できる時間をつくってくれました。テキストは安藤さんが持参した『よだかの星』(宮沢賢治)と『星の王子さま』(サンテグジュペリ)の二つから聴衆の多数決で(わずかに1票差!)『よだかの星』に決定。「よだかは、実にみにくい鳥です。」から始まった安藤さんの朗読は声の高さや強弱、テンポや間の取り方を変化させながら聞き手の想像力を自由にはばたかせ、およそ15分間にわたって時空を超えた物語ワールドへといざないました。
 「朗読もコミュニケーションです」と安藤さん。確かに直接の対話はなくても、作家、読み手、聞き手がつながった温かいひとときでした。「空気は伝わるものですね。今日お集まりの方は“聞く力”をもっていると実感しました」という安藤さんのことばが、コミュニケーターをめざす学生への最初のエールになりました。
line
「笑顔はいちばん大切なことばです」 写真2
 朗読の後は「話しことばをめぐる講義」です。腹式呼吸の基礎や明瞭な発音のための口の開き方などをレクチャーして頂きましたが、その前に安藤さんは、非言語(ノンバーバル)コミュニケーションの重要性を強調しました。「話し上手は聞き上手」といわれるように、対話中のうなずき、アイコンタクトはスムーズなコミュニケーションに不可欠です。なかでも「私はあなたの敵ではありませんよ、というメッセージをストレートに伝える笑顔がいちばん大切」と安藤さんは言います。
 そして、朗読の時間から一転、講義室に動きが生まれました。全員で一緒に横隔膜を意識して腹式呼吸を試みたり、アナウンサーが毎日実践する口の体操(「アエイウエオアオ…」という、あれです)をやってみたり、息をいっぱいに吸って少しずつ吐き出し、どのくらい息が続くかも測ってみました。ちなみに最低15秒は持続できないと、ミーティングなどで人に説明しても聞き手にはわからないものになってしまうようです。
 安藤さんのとても具体的、実践的な講義内容はもちろんですが、参加者を巻き込み、参加者と一緒に進める授業スタイルそのものも、カフェづくりに大きなヒントを示してくれているようでした。
line
プロの厳しい指摘は愛のムチ。
写真3
写真4
 今日の特別授業のメーンともいえるのが、この第3部。およそ2か月後には大勢の市民の前に立つことになる学生たちが個別に安藤さんの指導を受けます。学生が順番にマイクを持って前に出て、緊張気味にカフェ開催の挨拶を実演。待っていたのは、安藤さんの「いい声ですね」などのほめことばに続く、愛のダメ出しです。「口から出したつもりの声が、すぐ近くに漂っています。どの方向のどの距離にいる人に伝えたいか、ベクトルを意識して」「会場の反応を見ましょう。早口で聞き手を追いてけぼりにしないで」「顔の表情もことばのうちですよ。笑顔出ませんか?」「出てきたときのおじぎにも心を込めましょう」…。
 「私は怖い聞き手ですよ」とビシビシやってくれる安藤さんの熱意が学生にも伝わって、指摘された点は面白いほど改善されていきます。最初のひとこと「みなさん、こんにちは」は、棒読みから呼びかけへと変化しました。たったこれだけで印象がぐんとアップするのがわかります。さらに「こんにちは」の後でちょっと間を置いて会場を見回す余裕をみせて、ぎこちなさを消すことのできた学生もいました。他にも、会場を見回すときの視線は後ろの角から「Z」形に動かすと自然、会場の誰かに絞って視線を定める、センテンスは短くなど、安藤さんから当日役立つ具体的なアドバイスが惜しげもなく与えられました。この場に参加した全員が、とっても得した気分でした。
 学生たちが今日学んだことをふだんの生活で意識して、市民もゲストも学生も、互いに伝えたいことが伝わるメディカル・カフェができあがるよう期待しましょう。
 特別授業は、静あり動あり、笑いあり緊張あり、心をガシッとつかまれたままの密度の濃い90分でした。一生懸命取り組んでくださった安藤さん、ありがとうございました!
後期履修生の声
  • 「今日の特別授業で、ふだん何げなく使っているノンバーバルコミュニケーションも、意識すると難しいことだと思いました。本番では、学生同士、市民とアイコンタクトをしっかり取ることをめざします」
  • 「前期も履修しましたが、本番のカフェに参加できなかったのが悔しくて、後期も履修することに。もう、カフェづくりは趣味です。ずっと関わっていたいくらい(笑)」
  • 「高校時代は学校のイベントでミキシングなど裏方をやっていました。メディカル・カフェでは表舞台にも出るので、不安もありますが楽しみです」
  • 「安藤さんのレッスンはとてもわかりやすく、アドバイスも具体的でした。伝えようと思えば声は届くと、励まされました」
  • 「腹式呼吸って、意外と難しいですね」
  • 「本番では、間の取り方、話し方のめりはりに気をつけます」
  • 「前期の履修生です。今日の特別授業、前期もやってほしかったぁ。1月と2月のカフェもボランティア参加するつもりなので、ぜひ今日教えて頂いたことを生かします!」
 

「心に届く話しことば」

講師 : 安藤 千鶴子さん
profile
北海道放送(HBC)アナウンサーとして30年以上のキャリアを積み、その間、数多くのテレビ、ラジオ番組の制作に関わる。北海道大学放送講座の司会を担当していた頃には、授業「メディカル・カフェをつくる」のまとめ役である本学の阿部和厚先生と一緒に医学の視点を入れた番組作りにも取り組んだ。若手アナウンサーの指導・育成はもちろん、市民向けの「話しことば教室」を主宰。現在は、大人、子どもの双方を対象にした「声による表現のワークショップ」や、朝日カルチャーセンターにて朗読の講師を務める。「札幌コンサートホールKitara」などを会場に、チェンバロやギターなどとのセッションが評判を呼んでいる「朗読の会」など幅広く活躍中。
ご報告です。
後期の授業も順調に、熱気の中で進んでいます!
計5回のカフェを開催し、受講生の中に大きな達成感と、市民とふれあった温かな気持ちを残した前期に続き、10月11日「メディカル・カフェをつくる」後期授業がスタートしました。前期同様、合宿ワークショップでミニ・メディカル・カフェづくりを体験、その後毎土曜日午前の授業で、カフェ開催日、テーマ、ゲストを決定してきました。この日(11月29日)も午後の特別授業に先立ち午前中に8回目の授業を開講、告知ポスターのデザイン検討や実施マニュアル作成などを行いました。年明けに開催するカフェ本番の全体像はすでにしっかりと学生たちの中で共有され、準備にも熱がこもってきました。
(前期授業で実施された合宿ワークショップのレポートもご覧ください)
乞うご期待!
後期履修生がつくる
カフェの開催日をお知らせします。
2009年1月31日(土)
会場:
紀伊国屋書店札幌本店1階 インナーガーデン
ゲスト:
藤宮峯子先生(札幌医科大学 解剖学講座)
再生医療をテーマにした市民との対話です。
2009年2月8日(日)
会場:
紀伊国屋書店札幌本店1階 インナーガーデン
ゲスト:
近藤里美先生 (本学 看護福祉学部)
音楽療法をテーマにした市民との対話です。
(各カフェとも詳細は後日)

sp