チームワークを固めた2日間。「ミニ・メディカル・カフェ」もやってみました!

2回目の授業は、札幌市南区の静かな山間の温泉地・定山渓にて1泊2日の合宿として行われました。滞在中ホテルの1会場を借り切って教室とし、学生も先生も「メディカル・カフェ」だけに集中できる環境が用意されました。1日目「ミニ・メディカル・カフェ」の準備、2日目は発表というハードなスケジュールもなんのその、学生は抜群のチームワークとレベルの高い発表で先生を驚かせ、寝食と学びを共にした合宿効果をしっかり見せてくれました。

ワークショップが3回、行われました。

ワークショップ1は好調なすべりだし
 ホテル到着後、合宿のオリエンテーションと昼食をすませると、さっそく第1回目のワークショップが始まりました。この日予定されているのは計3回、4時間半のワークショップ。長いようですが、まだ2回目の顔合わせというグループで、明日の発表のテーマを決め、ストーリーを練り、必要なツールを作り、リハーサルすることを考えると、時間に余裕はなさそうです。しかも次のワークショップでは、明日の本番のための2分間CMまでやるというのです。  宿題だったタイトル案と簡単な企画書を持ち寄ってグループワークが始まりました。先生たちを驚かせたのは学生それぞれの段取りのよさ。インターネットはこの会場では使えないとあって、どのグループのテーブルにも学生が持参した教科書や資料がたくさんです。使えそうな画像を入れたパソコンを持ち込んだ学生もいました。タイトル決定に手間取ることもなく、リーダー、発表者、タイムキーパー、ファシリテーターの役割分担も決まり、各グループでぐんぐん準備が進んでいきます。
「ワークショップ2」はCM作り
 1回目のワークショップの後、定山渓を散策する2時間のアイスブレーキング(※)を経て行われた2回目のワークショプでは、2分間CMを披露しました。前半30分間でOHPや台本を用意し、後半は会場の全員に向かって明日の発表の魅力をプレゼンテーションします。明日の「ミニ・メディカル・カフェ」はカフェ参加者を小学生と想定して行いますが、このCMは大人向け。「もっとインパクトのある言葉、ない?」「肺の大きさって左右で位置が違う?大きさも違うんだっけ?」、OHPシートを書きながら口と頭はフル回転です。
 そして始まった2分間CMでは、初めて全員の前で各グループのタイトルが明らかになりました。“脳”のテーマを割り当てられたAグループは「脳のひみつ 目のふしぎ」、テーマが“心臓”のBグループは「心臓のドキドキってなんだろう」、“肺”のCグループは「タバコってなぜ体に悪いの?」、“消化器”のDグループは「食べたものは、どうしてそのまま出てこないの?」、そして、“腎臓”のEグループは「おしっこの旅」。たとえばDグループは「ヒトの消化管の長さは、約7m、約15m、約25m、どれでしょう?」とクイズ形式にするなどそれぞれのCMに工夫が見えました(正解は約7mです)。2分間という時間はあっという間のようですが、学生にとっては意外に長かったらしく、30秒以上を残してCM終了することも。明日の本番は15分の発表。時間配分もポイントとなりそうです。
(※アイスブレーキング:緊張をほぐして、参加者同士が打ち解け合うためのプログラム)
「ワークショップ3」でもアイデア続々
 夕食後は、この日最後の「ワークショップ 3 」です。各グループ、念入りに発表の仕上げに取り組みます。パワーポイントのスライド作り、手書きのOHPシート作り、台本作りはなかなかスムーズ。これまでさまざまな演習でプレゼンテーションを経験してきたのがうかがえます。むずかしいのはツール作りより、むしろ言葉遣い。医学用語をどう小学生向けに言い換えるか、どのグループも頭を悩ませていました。でも、疲れ知らずの学生たち。準備の最終段階でも次々と新しいアイデアが湧いてきます。「平面図だけじゃわかりづらいから、オレ立体モデル作るよ」「飽きないように、話の切り替えがポイントだね。じゃあ、ここで…」。リハーサルもしっかりすませ、小学生にわかる発表作りに夢中になったこの日のワークショップが終わったのは20時30分。外には静かな森の夜が広がっていました。

「ミニ・メディカル・カフェ」開催!

宿題は、カフェのタイトル案を考えること!
 朝9時、阿部先生のファンファーレ代わりのギター演奏で、いよいよ「ミニ・メディカル・カフェ」が幕を開けました。発表順はくじ引きで決定。5グループそれぞれが昨日一日の成果を、発表15分、質疑応答10分という時間のなかで発揮します。学生は小学生に戻ったつもりで他グループの発表を聞き、評価シートを使って内容や発表方法、質問を引き出す工夫などの視点から相互評価しました。では、5グループそれぞれの発表を紹介しましょう。
cグループ テーマ「肺」「タバコってなぜ体に悪いの?」

 会場が緊張が包まれるなかトップバッターはCグループ。パワーポイントを使い、肺が呼吸に重要な役割を果たしていることを図で示し、喫煙者と非喫煙者の肺の比較写真を見せながらタバコの害を熱く訴えました。「タバコを吸う人が『吸うと落ち着く』というのは間違い。タバコがないといられない、依存してしまっているということです」。子どもにとってタバコは大人の世界のイメージがありますが、「1本でも吸ったらだめ。ろくなことがありません」と依存の怖さを強調して締めくくりました。説得力ある発表の後は「禁煙するためのガムっておいしいの?」「どうして体に悪いのに売っているの?」と素朴ながら鋭い、答えに困らせる質問が出ました。
発表を終えて:
「一方的な情報提供が反省点。聞き手を巻き込みながら進める工夫が今後の課題です」
「インターネットが使えないのが辛かった。ネットのありがたみがわかりました」
bグループ テーマ「心臓」「心臓のドキドキってなんだろう?」
 Bグループもパワーポイントを利用。「心臓の働きはホース、バケツ、ポンプのどれ?」というクイズからスタート。心臓が筋肉、それも一日中動いても筋肉痛にならない特別な筋肉でできたポンプであると説明しました。そして、どんなときに心臓がドキドキするかを参加者から聞き、「ジェットコースターに乗ったとき」「こうやってマイクを持ったとき」など挙げられた例をホワイトボードに書いていきます。ただ、予定していた「好きな人に会ったとき」を参加者から引き出せなかったのが残念。でも、その後もクイズを織り交ぜながら参加者と双方向コミュニケーションを意識した進行で、体にたくさんの栄養(血液)を運ぶために心臓の動きが速くなることなどを伝えました。「人前で話す時のドキドキを止めるにはどうしたらいいの?」という質問には「うーん、目の前にあるのはカボチャと思って」と、おばあちゃんの知恵的(?)答えでした。
発表を終えて:
「自分がドキドキしてました(笑)。思っていたよりはうまくいったかな。ただ、質問への対応はむずかしいですね」
aグループ テーマ「脳」「脳のひみつ 目のふしぎ」
 司会者の紹介で登場した二人組の楽しい掛け合いで、目の錯覚や、盲点について解説しました。参加者全員に立ってもらってクイズの答えがわかった順に座ってもらったり、自分の目と手を使って両目で見る不思議を体験してもらったり、参加型の工夫が随所に見られました。盲点を実感できるシートや、スクリーンに映った展開図を実際に組み立てた箱など小道具も多彩。パワーポイントのスライドにも小学生を意識してアニメのキャラクターを使いました。「男と女の脳のつくりはなぜ違うの?」という質問には、他大学で脳を学んだ後本学に編入学した“Aグループの脳の専門家”が答えました。
発表を終えて:
「それぞれの個性を生かした役割分担がうまくいったと思います」
「専門用語に頼らずに説明するのは大変ですね」
eグループ テーマ「腎臓」「おしっこの旅」

 「みなさん朝起きたら、まず最初に何をしますか?」との問いかけから始まったEグループの発表。司会者が発表者をゲストとして紹介するというカフェ形式を意識したオープニングでした。前日のCM通り、腎臓の働きを“栄養を届ける郵便屋さん”と“不要物を回収するゴミ収集の仕事”、さらに“リサイクル工場”にたとえてパワーポイントのイラストを使いながら説明。参加者の中に入っていき、腎臓の形に切り抜いた紙を学生のシャツの腎臓の位置と思う部分に張ってもらう工夫もしました。質問することに慣れてきた参加者からは「腎臓には本当に人みたいのがいるの?」「おしっこ飲んでもだいじょうぶ?」など活発に質問が飛びました。
発表を終えて:
「精一杯の発表ができたと思います」
「どんな質問が来るかわからないって、こわいですね」
dグループ テーマ「消化器」「食べたものはどうしてそのまま出てこないの?」
 「ミニ・メディカル・カフェ」のラストを飾ったのはDグループ。スクリーンに映し出されたのは手書きの温かさあふれるイラストの数々で、OHPシートを複数重ねて動きを見せるなどの工夫をしました。「一日に出る胃酸の量は、2リットル、5リットル、10リットルのどれ?」(答えは2リットル)などいくつかのクイズを盛り込みながら胃、小腸、大腸などの働きを説明。「胆汁が茶色だからうんちも茶色なんですよ」など小学生の関心を引きそうなフレーズもありました。最後の質問タイムでは「なぜ小さくないのに小腸なの?」「おしっこは毎日出ないとだめなのに、うんちが何日も出なくてだいじょうぶなのはどうして?」といった質問が続々と出て、答えられないことには「調べておきます」とごまかさず素直に対応しました。
発表を終えて:
「短時間での準備で、ここまでよくできたと思います」
「勉強不足を痛感しました。質問を予想して答えを用意しておくことが大事ですね」
「ミニ・メディカル・カフェ」は大成功!
●阿部和厚先生(本学心理科学部教授)
「時間の管理も含め、とてもよくできました。予想以上に質問も出ました。短時間でよくここまで準備できたと思います。今日のこの発表をそのままどこかの小学校に持っていきたくなりました」
●河合祐子先生(本学心理科学部教授)
「クイズ形式が多く取り入れられ、よかったです。本番のカフェでは参加者はさまざまですから、性別や世代などへの配慮を忘れずに。そうすれば、きっといいカフェができます」
●松山清治先生(札医大保健医療学部教授)
「準備段階でもグループ内で遊んでいる人がいない、しっかりした協力関係ができていることを感じました。それぞれの学生の個性も発揮され、質のいい30分のテレビ番組を5本見た気分です」
●片倉洋子先生(札医大保健医療学部教授)
「昨日の準備中は、これは小学生にはむずかしいんじゃないかと思われた点が、今日の発表でわかりやすくなっていました。すごいですね。素晴らしい構成力を私の授業の参考にしたいです」
●竹田寛先生(札医大医学部助教)
「もっと苦しむ姿が見られると思っていたのですが、いい意味で予想を裏切られました(笑)。発表者と会場の一体感を作る質問もよかった。可能性を感じました」
●花澤佳代先生(本学看護福祉学部准教授)
「私は今日だけの参加でしたが、昨日一日でここまで準備できていたことに驚いています。今後は本番に向けて、参加者をどう楽しませるかとことん追求してください」
時間オーバーするグループもなく、「ミニ・メディカル・カフェ」は予想以上の出来栄え。学生一人ひとりが達成感と新たな課題を胸に、1泊2日の合宿は無事終了しました。
 

5月10日(土)
9: 00 JR札幌駅集合
バス2台で定山渓へ出発
10: 00 「サッポロピリカコタン」見学
合宿地の定山渓へ向かう途中、自然と共生する独自文化を築いてきた北海道の先住民族アイヌの歴史と心、生活、芸術を伝える札幌市アイヌ文化交流センターへ。ここは展示された工芸品や生活用品などに直接触れることができる体験型の施設です。ヒエやアワの脱穀やだんご作りに使われた「ニス(臼)」「イユタニ(杵)」に触れたり、子どもたちの遊び道具「カリプ(山ブドウのつるで作った直径20〜40センチの輪)」で実際に輪投げ遊びをしてみたり、短い時間ながらアイヌ文化を肌で感じてきました。

11: 00
ホテル到着
11: 15
オリエンテーション&
アイスブレーキング
12: 00
昼食
13: 00
ワークショップ 1
15: 00 アイスブレーキング
グループ単位で山間に静かに広がる定山渓温泉街を散策。カッパ伝説が残るまちを、形も表情もユニークなカッパ像をいくつも見つけながら豊平川のせせらぎを聞きながらのそぞろ歩きです。温泉街に3 か所ある足湯ではグループ仲良くのんびり浸かる姿が見られました。
17: 00
ワークショップ 2
18: 00
夕食
19: 00
ワークショップ 3
21: 00 アイスブレーキング
いわゆる懇親会。ジュースとお茶で「きょう一日お疲れさま!」の乾杯をした後は、グループの枠をはずしてのおしゃべりタイムでした。

23: 00
就寝
5月11日(日)
7: 30
朝食
8: 30
会場に集合・発表準備
9: 00 「ミニ・メディカル・カフェ」開催
5グループそれぞれがテーマに沿って個性的な発表をしました。
12:00
昼食
13:00
ホテル出発