がん看護コース 緩和ケアアウトリーチナース養成プログラム学生支援事業

 令和3年12月5日(日)13:00より、北海道専門看護師の会共催の「災害に備えた支援を考える」をテーマとしたワークショップをオンラインで開催しました。午前中の講演会に引き続き、宮城大学大学院看護学研究科教授 菅原よしえ先生をアドバイザーとして迎え、「災害サイクルを踏まえた上で、自助と共助の面から災害対策として何を備えるか?」というテーマで話し合いました。参加者は、保険医療機関看護師、大学院生、大学生など14名でした。
 ワークショップでは、具体的な実践内容を考えられるよう2018年の胆振東部地震の際に生じたブラックアウトを題材に、経験に基づく課題と対応策を発表し合い、そこから午前中の講演内容をもとに災害サイクルにそった備えについて検討しました。
 ブラックアウトの際の課題と対策について、被災時に学生や教員だった参加者からは、何か力になりたいと思ったがどこにアプローチをすればよいかわからなかったという課題を挙げられ、その対応としてボランティアの受け入れ態勢の構築の必要性が話し合われました。また病院所属の看護師からは、院内の対応で手一杯の中、院外の対応もしなければならないなどの課題が挙げられ、対策として院内外の指示系統の確認の重要性が話し合われました。また、看護師として出勤したい使命感と、自分の家族を置いていかなければならない罪悪感とで気持ちが大きく揺れたという精神面の課題も共有しました。
 また、災害サイクルの備えについては、患者の自助を育むために自分の治療や身体状況について説明できるものを身に着けておく、災害時にはどこに助けを求めるとよいか確認しておくなど支援が必要であること、共助としては緊急時における情報共有システムの構築が重要であることが確認できました。
 ワークショップではそれぞれの経験を共有することに時間がかかり、自助・共助の面からの備えという点での具体的な支援策が見出しきれなかった中、菅原先生からは、多くのご助言をいただきました。災害時には、がん患者も被災することで、改めて死を意識し、より一層防御の気持ちに傾いていくため、その時にどのような支援を受けたかがその後の患者の行動につながること、災害時は医療者も被災者となるなど平時とは違う状況であることを意識し、災害サイクル、被災者の心理状況を把握した上で、今どのような支援が必要なのか理解することが重要であること、がん治療は命を継ぐものであり、副作用を含めて安全を守れるのであれば、治療を継続することが最善という場合もあることなど、精神面の支援から実践まで幅広くご指導いただきました。
 参加者からは、ブラックアウトの時に経験した葛藤や罪悪感、心苦しさなどを共有できたことで、自分自身の精神面のケアになった、気持ちが整理できたとの意見も多く、有意義なワークショップとなりました。災害看護もがん看護と同様に広い領域であり、災害の種類や災害サイクルにあわせた事例検討などさらに細分化・焦点化して災害時の備えを具体化していくことが今後の課題だと感じました。


~アンケートより~
  • ディスカッション前には想像できなかったが、ディスカッションすることで、災害が起こることを想定して、普段からできることが具体的になり、非常に学びが多かった。
  • 通り過ぎてしまっていた災害体験を今後の備えに活かしていく必要性を認識いたしました。
  • 地震の時に感じた、被災者としての自分、看護師としての自分の間の葛藤を、誰にも話せずにきたので、ワークショップで話し合うことができてとてもよかった。