がん看護コース 緩和ケアアウトリーチナース養成プログラム研修会

 2020年度第1回研修会は、2021年2月21日(日)「地域での暮らしを支える地域連携ネットワーク」と題して、東京女子医科大学看護学部/看護学研究科教授の長江弘子先生をお招きし開催されました。
 まず講演の前半では、「地域、そして連携とは何か」という基本的な概念の再確認が行われました。私達が日常的に使用する「地域」という言葉には、人々の生活があり、さらにそこには時間、場や空間、機能、そして自律的に生きる人間が存在しているというイメージが始めに提示され、私達はその人々の健康を守るために看護にあたる者として、自らの姿勢を問い直す機会となりました。そして次に、長江先生が現在取り組まれている継続看護マネジメント(CNM)の考え方と実践への活用方法について、具体例を交え紹介いただきました。CNMは、患者と家族の「生きる」目標を実現するために、病状や生活状況と多職種連携の状況の情報を統合的に見て整理しつつ、生活機能の変化を時間軸で捉えて図として可視化し予測するマネジメントであることが特徴です。そしてそれが療養の場所が変更となっても継続的に描かれるものであることを知ることで、とかく療養の場の変更のための調整に注力する機会の多い私達看護師にとっては、より患者と家族の生活過程を中心とした捉え方と連携のあり方を再考する機会となりました。
 がん経験者の治療や療養は、生活を基盤として継続的に行われるよう体制づくりが進み、がん専門医療人材として活動するがん専門看護師も、急性期病院から地域や在宅まで幅広い現場で活動するようになりました。今やその活動において、多職種連携や継続看護のネットワークづくりは欠かせません。長江先生は、連携において作られる関係は「顔の見える関係」、すなわち日常的な会話をしながら患者を一緒に見ることを通して、互いの人となりが見える関係を作ることが大切であると話され、連携に求められる看護師の姿勢も示してくださいました。今回の研修会を通して、参加者より「その人の生活がどのように維持されているのかを捉え、対象者の言葉から目標をおく必要性が明確になった」「CNMを通して臨床場面での情報整理の方法や考え方を学ぶことができた」「CNMで可視化することにより、今まで見えなかった景色が見えてくると実感できた」といった感想が寄せられました。
 看護師にとってこの研修会は、今後さらに対象者の生活を中心的かつ継続的に捉え、その人が生きることを支えることを目指すために、現場で活用することができる具体的な学びを得る機会となりました。


~アンケートより~
  • 普段の業務の中で連携や退院支援などの言葉が先行していないかなど改めて看護を考える機会となった。
  • トラジェクトリでその人の全体(生きている過程)を可視化し共有することは、QOL向上に向けたケアを考える上で友好的であることを学んだ。
  • 継続看護マネジメントの考え方についてとても分かりやすかったです。