学長就任挨拶

医療系総合大学としての目標
― 新医療人育成の北の拠点をめざして ―
北海道医療大学
  学  長  松 田 一 郎
Profile
北海道大学医学部卒業、同大大学院医学研究科修了
マギル大学医学部研究員、北海道大学医学部講師
ジョーンズホプキンス大学医学部文部省在外研究員
熊本大学医学部教授、同大学医学部附属病院長
本学大学院看護福祉学研究科教授、心理科学部特任教授を歴任。
平成17年4月より本学副学長、平成18年4月より本学学長。



 1974年、知育、徳育、体育の三位一体を建学理念として創立された本学は一昨年開学30周年を迎えました。現在、薬学部、歯学部、看護福祉学部、心理科学部の4学部を擁し、さらに歯科衛生士専門学校を抱える医療系総合大学として確たる存在になりました。

 本学の将来計画については、2008年まで具体的に決まっており、現在それに向かって着々と進行中であります。この中には、文部科学省の「特色ある大学教育支援プログラム」と「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」に採択された教育計画も盛り込まれています。廣重力前学長が掲げた「新医療人育成の北の拠点を目指す」という行動目標、また新しい研究・医療のあり方として取り上げた「個体差健康科学」、いずれも本学の基本的姿勢として今後も継承していかなければなりません。このことについて、もう少し詳しく述べてみたいと思います。

 「新医療人育成の北の拠点を目指す」、ここでのキーワードは「北」と「新医療人」です。和辻哲郎は風土を「土地の気候、気象、地質、地形、景観などの総称である」と定義しています。そして和辻氏を始め多くの先人が「風土」が、その国の、またその土地の文化の形成に大きく関与することを認めています。われわれはこの北海道の春の緑の大地に身を委ねることで心の広さ、豊かさを学び、冬の厳しさの中で、われわれは互いに協力して生きること、耐えることを、そしてその尊さを学んできました。時には人間の力がもつ限界、それを知る必要性を学んできました。つまり、「北」というキーワードの意味するものは単に本学が北に位置しているというだけではなくて、忍耐強くおおらかな性質を育み、生きるためのさまざまな知恵を与えてくれる環境、それに他なりません。
 次の「新医療人の育成」をどう考えるべきでしょうか。保健・医療・福祉の基本は人命を尊重し、個人の尊厳を守り、熟達した専門技術を通じて、患者、クライアントの不安・苦痛を和らげ、ケアをすることです。最近、生命倫理を支える思想の一つに「ケアの倫理」が取り上げられるようになりました。これは他者との相互関係を基にした、誠実、愛などの密接な人間関係に価値をおいた考えで、これまで権利、義務の考えを基にして展開してきた伝統的な生命倫理とは別の次元のもと捉えられています。「新医療人の育成」はこうした思惟・思索についての学習を含めた幅広い人間基礎教育を基に、専門職教育を充実することによって始めて可能になるのです。このような教育体系を通じて、学生の潜在能力を開発し、心優しい、優秀な保健・医療・福祉におけるプロフェッショナルを育成すること、これこそが本学の使命であると信じています。
 さて“個体差”をどう捉えるべきでしょうか。近年のゲノム研究、ハプロタイプ・マッピング研究の結果、ヒトのDNA構造は一卵性双生児でない限り各人が異なっていることが明らかになりました。さらにこれまでの研究で、複数の遺伝子群は周りの環境に応じて、オン、オフを繰り返しさまざまに発現調節していることがわかってきました。つまり、各人は与えられたそれぞれの環境のなかで、こうした対応を通じて、自分独自の生命誌を育てているのです。人それぞれがそれぞれの“自分の物語を生きている”といってもいいでしょう。大事なことは人それぞれが多様であることを知ることであり、それを認め、理解することです。
 このように「新医療人育成の北の拠点を目指す」という行動目標を基本構想とするとき、われわれがしなければならないのは人間基礎教育、専門教育を含めて、学部間の垣根を低くして、医療系総合大学としての強みを発揮することだと思っています。この北の風土の中で、保健・医療・福祉の基本理念を自分自身の信念とする各分野でのプロフェッショナルを育てる、この目標を追いかける大学にしたい、それを心から念じています。目標を同じくする意欲的な皆さんの入学を待っています。


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