—顎顔面頭部領域の自律神経性血流調節に関する研究—

 顎顔面頭部領域の血流動態は同領域の機能維持に重要な因子の一つであり、この血流動態の異常には自律神経機能の乱れを伴う場合が多く見受けられます。しかしながら、顎顔面頭部領域の血流障害及びこれらに伴う機能障害(咀嚼筋痛、顎関節症及び頭痛など)と自律神経系との関連性については未だ不明な点が多く残されているのが現状です。

 本分野では顎顔面頭部領域の自律神経性血流調節の末梢及び中枢神経機構とそれらの生理学的役割並びに同領域における諸種の疾患との関連性について生理学的、薬理学的,分子生物学的及び組織学的手法を用いて研究を行っています。これまでに、1)咀嚼筋には他の骨格筋には存在が認められていない副交感神経性血管拡張線維が存在する、2)これらの線維は三叉神経や迷走神経からの感覚情報により活性化されて、反射性に咀嚼筋の血流増加を誘発する及び3)反射性副交感神経性血管拡張反応は顎顔面頭部領域に血液を供給する総頸動脈の血流増加に関与することを明らかにしており、これらの結果から顎顔面頭部領域の血流動態における自律神経性血流調節(とくに副交感神経系)の重要性が示唆されています。

 現在本分野では、i)侵害性入力による副交感神経性血管拡張反応の抑制機構、ii)三叉神経の感覚入力による脳血流変化と自律神経性血流調節との関連性及びiii)慢性的な咀嚼機能障害(顎関節症など)に伴う自律神経性血管反応の変調とそれらのスクリーニング法への応用に関して研究を行っており、顎顔面頭部領域の自律神経性血流障害に起因する同領域に特有な疾患の病態の解明とそれら疾患の予防と病態改善のアプローチを確立することを目指しております。

 

ー副交感性血流増加反応(2次元血流計)ー

顎下腺

大脳皮質