脚から医療へ
アプローチ。

脚は『第二の心臓』と呼ばれるくらい、
重要な部位。
それぞれの学科では、『脚』を
どんな捉え方をしているのか? 
どんなことが考えられるのか?
今まで知らなかった医療のこと、
医療の世界をのぞいてみよう!

薬は病気や症状を抑えてくれるものですが、同時に他の反応を起こしてしまうことがあります。例えば、炎症を抑えるステロイドなどを服用すると、脚がむくむことがあります。反対に、利尿作用のある薬を服用すると、体内のカリウムが低下しイオンのバランスが崩れ、脚の筋肉の過剰な収縮が引き起こされることもあります。一般に、筋肉は各イオンのバランスによっても反応の程度が決まります。その結果、薬の処方は、有効な治療と副反応の双方を考えたうえで決められているのです。病気の症状は体が原因物質と闘って起こるサインでもあるため、ただ抑えればいいものでもありません。

薬の反応により体内の水分量などが変わってしまうことで、影響を受けやすい脚。反応については、投薬の際にもらう注意書きに書かれていて、薬剤師からも説明されます。

治療には、薬の飲み合わせも大切です。服用を管理するために、携帯を推奨されているのが「おくすり手帳」。普段の服薬管理として、投薬時に薬剤師が薬の飲み合わせについて確認しています。また、災害避難時にも持っていれば、適切な薬物治療を続けることができます。
病気の治療の場面で重要な役割を果たす薬が体に効くメカニズムを知るためには、解剖生理学、生化学や薬理学などの幅広い知識が必要です。これらの知識をもとに、薬の開発や、同じ効果を持つ薬でもどの薬を選択すれば高い効果が期待され、患者さんのQOL(Quality Of Life=生活の質)の向上につながるか、といった研究も進められています。

「おくすり手帳」により、処方された薬の内容や服用歴を薬局の窓口等で正しく伝えることができます。最近はスマートフォンのアプリにもなり、携帯しやすくなりました。

薬学部 准教授

浜上 尚也

パーキンソン病の治療薬に関して研究する浜上先生。体内に含まれる神経活性物質「イサチン」を10年以上追いかけ続けています。

本学薬学部卒業。同大学院薬学研究科修士課程修了。本学薬学部助手、同講師、カリフォルニア大学特別研究員等を経て、現職。
博士(薬学)。専門は、生化学、薬理学。研究テーマは、神経変性疾患と病態マーカー。

パーキンソン病の治療薬に関して研究する浜上先生。体内に含まれる神経活性物質「イサチン」を10年以上追いかけ続けています。

本学薬学部卒業。同大学院薬学研究科修士課程修了。本学薬学部助手、同講師、カリフォルニア大学特別研究員等を経て、現職。
博士(薬学)。専門は、生化学、薬理学。研究テーマは、神経変性疾患と病態マーカー。

歯は脚とは何の関係もないように思えますが、実は噛み合わせが悪いと姿勢に歪みが生じるなど、全身に影響が出るといわれています。1989年から厚生省(当時)と日本歯科医師会で推進している「8020運動」は、80歳になっても20本の歯を残そうという運動です。20本の歯があれば十分に食事をとることができますし、奥歯を噛み締めることで全身に力が入り、より健康な状態を保つことができます。歯は一度折れると二度と元には戻りません。しかし、スポーツなどの場面では、道具や人に強く接触し、歯を損傷してしまうケースがあります。

歯は本来、食べ物を噛むためのもの。しかし噛み合わせが悪いと顎関節の動きに影響し、全身に歪みが出ることも。反対に体の姿勢の悪さが噛み合わせに影響することもあります。

そこで、近年では歯に装着するスポーツ用のマウスガードが普及し、競技によってはマウスガードがないと試合に出られないものもあります。 また、虫歯や歯の痛みがあると、スポーツ時に十分なパフォーマンスを発揮できません。そのためオリンピック・パラリンピックの代表選手には、内科、整形外科とともに歯科のメディカルチェックが義務付けられています。 スポーツ用のマウスガードの製作、スポーツ選手の歯の治療や応急処置、メディカルチェックが行える歯科医師「スポーツデンティスト」の認定制度も2015年に開始。スポーツの世界でも、全身の機能に関わる歯がより重視されるようになってきていることがわかります。

スポーツ用のマウスガード。歯や顎関節の外傷の予防、接触による脳震盪の予防にもなります。市販されているものもありますが、自分の歯に合わせて作った方がより効果的です。

歯学部 教授

疋田 一洋

大学時代はアイスホッケー部に所属していた疋田先生。現在も競技に帯同するなど選手の歯の健康と安全をサポートしています。

北海道大学歯学部卒、同大学院修了(歯学博士)、同歯学部助手、本学医療科学センター講師、ベルギー王国ルーベンカソリック大学客員教授、本学医療科学センター助教授などを経て、同歯学部口腔機能修復・再建学系デジタル歯科医学分野教授(現職)

大学時代はアイスホッケー部に所属していた疋田先生。現在も競技に帯同するなど選手の歯の健康と安全をサポートしています。

北海道大学歯学部卒、同大学院修了(歯学博士)、同歯学部助手、本学医療科学センター講師、ベルギー王国ルーベンカソリック大学客員教授、本学医療科学センター助教授などを経て、同歯学部口腔機能修復・再建学系デジタル歯科医学分野教授(現職)

脚は第二の心臓とよくいわれます。心臓は血液を体全体に送り出す器官ですが、心臓から最も遠い脚は、血液を心臓に戻す機能を持ち合わせているからです。特にふくらはぎの筋肉は、血液のポンプとして役割を果たしています。
入院患者さんをケアする病棟の看護師も、脚の状態をみて患者さんの体の異変を発見することがあります。血液やリンパ液の流れが悪くなることでむくみが出ている時などは、弾力性が高い弾性ストッキングという特殊なストッキングを履かせて圧力をかけ、血流を促進します。

血流障害のほかにも、常に同じ場所が床に触れていることによって起こる褥瘡(じょくそう)や傷、潰瘍がないか…。患者さんの体を拭く時などに、状態を見てケアしていきます。

この弾性ストッキングが特に活躍する場面として、手術や術後の寝たきりの状態の時が挙げられます。長時間にわたり脚を動かさないでいると、血流障害により脚に血栓(血のかたまり)ができる深部静脈血栓を起こし、できた血栓が心臓や肺に移動して肺動脈を詰まらせると、大変危険な状態になります。それを防ぐために20年ほど前から、手術中・手術後に弾性ストッキングを患者さんに履かせるようになりました。さらに強く血流を促進したい場合は、間欠的空気圧迫装置という機械を使います。
看護現場での脚のケアは、患者さんの快適性を高めるものから、病気の症状に関わるもの、このように命に関わるものまで多岐にわたり、重要な位置付けになっています。

医療用の弾性ストッキングは、市販されているサポートストッキングより圧が強く、患者さんに履かせるのも一苦労です。脚の太さによって細かくサイズ分けされています。

看護福祉学部 看護学科 講師

神田 直樹

看護の臨床では、救命救急センターやICUで急性期や重症患者の看護を担当してきた神田先生。現場での貴重な経験を学生に伝えています。

札幌医科大学附属病院にて高度救命救急センター、小児科、ICUに勤務、札幌医科大学大学院保健医療学研究科博士課程前期修了、日本看護協会 急性重症患者看護専門看護師
2014年本学看護福祉学部 看護学科(成人看護学講座) 講師

看護の臨床では、救命救急センターやICUで急性期や重症患者の看護を担当してきた神田先生。現場での貴重な経験を学生に伝えています。

札幌医科大学附属病院にて高度救命救急センター、小児科、ICUに勤務、札幌医科大学大学院保健医療学研究科博士課程前期修了、日本看護協会 急性重症患者看護専門看護師
2014年本学看護福祉学部 看護学科(成人看護学講座) 講師

もし、障がいによって脚が使えなくなったら、どのように生活をするか。社会福祉士が医療機関や専門職と連携して障がいのある人の地域生活や社会生活のサポートを考える一環として、障がい者スポーツの活動が注目されています。障がい者スポーツは、日常的に取り組める身近なものから、パラリンピックをめざすトップアスリートが取り組むものまで幅広く展開されています。公式競技の大会などは国際ルールに則って行われますが、地域の仲間同士で取り組む場合は、自分たちがやりやすいように独自のルールや用具を工夫して取り組むことも可能です。工夫次第で、障がいの有無にかかわらず公平に楽しむことができるのです。

障がい者スポーツに使われる道具は、専用に作られているものも多く、動きやすさや軽さ、持ちやすさなどが工夫され、さまざまな障がいのある人が楽しめるようになっています。

障がい者スポーツ指導員という資格もあり、障がいに関する知識やサポートについて学ぶことで取得できます。北海道医療大学の中でもこの資格が取れるカリキュラムを2020年度から導入しました。
スポーツは健康や、楽しみ、そして社会参加にもつながります。また、プレーするだけでなく、観戦する、支えることも立派な参加方法です。障がい者スポーツを通して、誰もがスター選手になれる可能性があります。「できない」ことに目を向けるのではなく「できる」を積み重ねていけることへのサポートから、やりたいことに挑戦できる地域や共生社会を実現するための手段のひとつにもなるのです。

車いすバスケットボールなどの公式競技は誰でも公平に楽しめるよう、各選手の障がいの度合いに応じて持ち点が決められ、チームの合計持ち点をそろえるルールになっています。

看護福祉学部 臨床福祉学科 助教

近藤 尚也

自身も学生時代から支援活動に携わってきた近藤先生。現在も障がい者スポーツの普及や学生の参加促進に尽力しています。

障がい者支援施設生活支援員、居宅介護事業所サービス提供責任者等を経て2014年から現職。専門は余暇・スポーツ支援を中心とした障がい福祉とアダプテッド・スポーツ。社会福祉士、介護福祉士、中級障がい者スポーツ指導員。北海道障害者フライングディスク連盟副会長、北海道アダプテッド・スポーツ研究会事務局長。

自身も学生時代から支援活動に携わってきた近藤先生。現在も障がい者スポーツの普及や学生の参加促進に尽力しています。

障がい者支援施設生活支援員、居宅介護事業所サービス提供責任者等を経て2014年から現職。専門は余暇・スポーツ支援を中心とした障がい福祉とアダプテッド・スポーツ。社会福祉士、介護福祉士、中級障がい者スポーツ指導員。北海道障害者フライングディスク連盟副会長、北海道アダプテッド・スポーツ研究会事務局長。

体と心は結びついている、というのは以前から知られてきていますが、心理的要因で脚が痛くなったり、歩けなくなったりすることもあります。
脚や腰などの痛みが通常治療より明らかに長い6か月を超えて続く場合、その多くは医学的に明確な原因がわからないといわれています。そうなると手術や投薬による治療だけでは改善が期待できません。実はそこには、ストレスや人間関係による要因が隠れていることがあります。人間は自分にとってメリットのある行動を繰り返す傾向にあり、例えば、普段はそうではないのに、脚の痛みで“ソファに座る”ときだけ周囲が心配しあれこれと手伝ってくれる場合、治療のために脚を動かすよう指導されていても、“ソファに座る”(痛みの改善にとっては好ましくない)行動が続いてしまいます。

精神的な不調を訴える場合、精神科や心療内科を受診することが多いですが、脚の痛みなどの症状は外科につながることが多いため、心理的な要因にはたどり着きにくいものです。

そこで症状を改善するために行うのが心理職によるカウンセリングです。患者さんの状況や生活環境をよく聞いて痛みが続く理由を探ったうえで、考え方や行動パターンに注目して、痛みや生活での困り感を減らすよう、関わっていきます。
これは認知行動療法という心理学的アプローチで、ここ20年ほどで脳科学的にも効果が立証されています。
2017年には公認心理師が国家資格になり、医療の現場でも心理職の活躍がますます期待されます。例えば、生活習慣病などで食習慣や運動習慣を改める必要がある場合でも、行動変容を目的とした心理療法が効果的であるといわれています。心理療法は単に精神的な問題だけではなく、こうしたさまざま身体症状や人の行動変容にも効果がある治療法として活用されており、今後も大きく期待されています。

投薬治療は即効性のある治療、心理療法は長期的に効果を発揮する治療。体の健康に心は密接につながっており、この二つを融合させるとより効果的な治療が期待できそうです。

心理科学部 准教授

本谷 亮

「医療に強い心理」を掲げる北海道医療大学に惹かれたという本谷先生。心理療法の効果を医療現場に生かすべく研究を進めています。

本学心理科学部卒業、同大学院心理科学研究科修士課程・博士課程 修了。日本学術振興会特別研究員、福島県立医科大学医療人育成・支援センター/医学部 神経精神医学講座助教を経て、本学心理科学部講師に着任。現在は、同准教授。専門は、臨床心理学、心身医学。

「医療に強い心理」を掲げる北海道医療大学に惹かれたという本谷先生。心理療法の効果を医療現場に生かすべく研究を進めています。

本学心理科学部卒業、同大学院心理科学研究科修士課程・博士課程 修了。日本学術振興会特別研究員、福島県立医科大学医療人育成・支援センター/医学部 神経精神医学講座助教を経て、本学心理科学部講師に着任。現在は、同准教授。専門は、臨床心理学、心身医学。

人が生活する中で重要な役割を果たしている脚。怪我や病気などで動かなくなった筋肉や関節が動くようにリハビリテーションを行うのが、理学療法士の仕事です。
例えば膝関節や股関節など、脚の一部の動きに問題がある場合や痛みが出たりする場合、その原因が他の関節にある場合も多々あります。理学療法士は問題がある部位以外の状態も詳しく検査・評価しながらその原因を探っていきます。原因が何なのか仮説を立て、その仮説に対して介入しながら原因を突き止めていくのは、理学療法士ならではのアプローチです。

短距離選手やプロサッカー選手などに起こりやすいハムストリングの肉離れは、ダッシュなど高速の運動時に筋肉が切れてしまう疾患です。

怪我の主要な原因のひとつはスポーツです。最近は理学療法の分野でも、スポーツ時の怪我の予防に関する研究が進められています。怪我は強い衝撃によって生じる外傷と、弱い負荷が繰り返し加わることで起こる障害に分けられます。成長期の中学生に起こりやすい腰の分離症は、腰の骨に負荷が繰り返し加わり、骨が徐々に折れてしまう疾患(疲労骨折)です。これは腰の疾患ですが、走る・跳ぶ・投げる・蹴るなどの動作の中で、脚や上半身など全身をしっかりと動かすことができるようにコンディションを整えることで腰部への負荷が減り、防ぐことができると考えられています。
そのほか、怪我をした後には筋力が低下しますが、ハムストリングの肉離れでは特に遠心性収縮(筋が伸びながら収縮する)時の筋力が低下していて、低下した状態のまま復帰すると再発が多いなど、怪我の原因も研究によって明らかになってきています。

姿勢の癖によって脚が歪むと、それを補うために腰が歪み、さらにそれを補うために背骨が歪み、首が歪み…ある部分の歪みが他の部位に連鎖し、異常を引き起こします。

リハビリテーション科学部 理学療法学科 助教

山根 裕司

Jリーグ下部組織でのトレーナー経験もある山根先生。理学療法士として、選手が安心してプレーできるようサポートしています。

札幌医科大学保健医療学部理学療法学科卒業。札幌医科大学大学院保健医療学研究科博士課程前期修了(理学療法学修士)。理学療法士、認定理学療法士(スポーツ)、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー。北海道サッカー協会医学委員。

Jリーグ下部組織でのトレーナー経験もある山根先生。理学療法士として、選手が安心してプレーできるようサポートしています。

札幌医科大学保健医療学部理学療法学科卒業。札幌医科大学大学院保健医療学研究科博士課程前期修了(理学療法学修士)。理学療法士、認定理学療法士(スポーツ)、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー。北海道サッカー協会医学委員。

脚が動かなくなったのを回復させるのが理学療法なら、作業療法では脚自体の機能以外、生活する環境や周りのサポートなども含めて、QOL(Quality Of Life=生活の質)を高めることをめざします。
作業療法では食事やトイレ、入浴などのセルフケア、家事、仕事、余暇、地域活動の5つを生活行為の柱として考え、自立を目標としてリハビリテーションを進めます。この中でもトイレや入浴にも脚を使いますし、家事も調理や掃除など立位で行うことが多いため脚を使います。その人ができない動作はサポート器具を使ったり、周囲の人がサポートするなど環境によって補います。

例えば階段を上りづらくなったら、脚を動かす練習をすると共に、手すりを設置してて階段を上る動作をサポートするのも、作業療法で自立をめざすための大切なアプローチです。

作業療法では本人がどのような生活を望んでいるかをよく聞き、理解することが大切です。リハビリテーションの内容もすべての人が一律に取り組むのではなく、その人が望む生活に合ったものが取り入れられています。
地域の中で、セルフケアや家事に関する動きや、転倒予防の動きを取り入れた介護予防体操も積極的に行われるようになっています。当別町にも、北海道医療大学の作業療法学科と理学療法学科が考案した「当別シャッキリ体操」があります。介護が必要になる前から、そして機能が低下してきても、その人らしい生活を実現するためにサポートするのが作業療法士です。

当別町の高齢者クラブと大学が共同で、約300人の高齢者が集まり「当別シャッキリ体操」をするイベントを実施。高齢者の皆さんも、学生との活動を楽しみにされています。

リハビリテーション科学部 作業療法学科 講師

浅野 葉子

北海道作業療法士協会の理事も務める浅野先生。地域の高齢者が集う活動がいかに健康に寄与しているかを見つめ続けています。

北海道⼤学医療技術短期⼤学部作業療法学科卒業、藤⼥⼦⼤学⼤学院⼈間⽣活学専攻修了。介護⽼⼈保健施設で作業療法⼠として⼊所・通所・訪問リハビリテーションに従事。ケアマネジャー(介護⽀援専門員)資格ももち、ケアプラン⽴案にも携わった。2013年4⽉、本学に着任、リハビリテーション科学部の開設準備に関わり、現在に⾄る。
北海道作業療法⼠会の役員も務めている。

北海道作業療法士協会の理事も務める浅野先生。地域の高齢者が集う活動がいかに健康に寄与しているかを見つめ続けています。

北海道⼤学医療技術短期⼤学部作業療法学科卒業、藤⼥⼦⼤学⼤学院⼈間⽣活学専攻修了。介護⽼⼈保健施設で作業療法⼠として⼊所・通所・訪問リハビリテーションに従事。ケアマネジャー(介護⽀援専門員)資格ももち、ケアプラン⽴案にも携わった。2013年4⽉、本学に着任、リハビリテーション科学部の開設準備に関わり、現在に⾄る。
北海道作業療法⼠会の役員も務めている。

脳卒中などが原因で起こる「高次脳機能障害」では、ことばを聞いたり話したりすることが苦手になる、いわゆる失語の患者さんが多数を占めており、リハビリテーションでことばに関する機能を活性化するのが、言語聴覚療法です。現在の日本高次脳機能障害学会は、以前は日本失語症学会という名称だったという話からも、失語からの回復がリハビリテーションに重要な位置を占めていることがわかります。
言語聴覚士というと、ことばを聞いたり話したりすることや食べものを飲み込む訓練をするというイメージがありますが、症状の原因となる脳の機能についても知識を備えているのです。

全身のあらゆる器官に指令を送る脳。脳の機能や起こる現象にはまだ原因がわかっていないものが多くあり、研究では実際の患者さんの症例を集めて分析が行われています。

高次脳機能障害の症状には他にも、目の前の物の認識に異常が出る「失認」、手や脚などの動作に異常が出る「失行」があり、脳の傷ついた部分によって症状が違ってきます。失行の症状のひとつとして、脚が勝手に動くことがあります。脚の機能自体には問題がないのに、転がってきたボールを脚が勝手に蹴ったり、目の前に靴があったら脚が勝手に履いてしまう、といったことが、患者さんの意思に反して起こります。
リハビリテーションではこれらの症状に合わせて、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士が専門性を発揮しますが、まだ新しい職種である言語聴覚士は人数が不足していて、超高齢社会の中でその養成が期待されています。

脳のどの部位が損傷したかによって、体に出てくる症状が変わります。リハビリテーションでは生活の質を高めるために、体のほかの部位や反対側の機能を使って補う訓練を行います。

リハビリテーション科学部 言語聴覚療法学科 教授

中川 賀嗣

精神科医として、高次脳機能障害について研究する中川先生。脳が起こす不思議な現象に着目し、それを解明する研究を進めています。

大阪大学医学部卒、同大学院にて博士(医学)。兵庫県立高齢者脳機能研究センター、大阪大学(1996年ローマ留学)、愛媛大学で勤務の後、2003年本学赴任。日本神経心理学会理事、日本高次脳機能障害学会理事。精神保健指定医、老年精神医学専門医、精神神経学会専門医・指導医。

精神科医として、高次脳機能障害について研究する中川先生。脳が起こす不思議な現象に着目し、それを解明する研究を進めています。

大阪大学医学部卒、同大学院にて博士(医学)。兵庫県立高齢者脳機能研究センター、大阪大学(1996年ローマ留学)、愛媛大学で勤務の後、2003年本学赴任。日本神経心理学会理事、日本高次脳機能障害学会理事。精神保健指定医、老年精神医学専門医、精神神経学会専門医・指導医。

「脚が痛い、しびれる」「歩きにくい」という症状には、動脈硬化症など血管の病気が隠されている可能性があります。動脈硬化症とは、動脈の⾎管壁が硬くなり、⾎管の内側にコレステロールなどが溜るまことによって⾎液の流れが悪くなる病気です。医師の診察でこれらの病気が疑われた場合は、臨床検査技師が検査を行います。
血管の状態を見るのに有効なのが、下肢の動脈の超⾳波(エコー)検査です。体にエコーを当て、⾎管の様⼦を視覚的に観察します。
動脈硬化が進⾏すると、⾎管が細くなったり(狭窄)詰まったり(閉塞)するので、エコーを使って⾎流の評価も合わせて⾏います。これは、特に腹部から⾜先の動脈までの検査をし、動脈硬化の進み具合を評価するのに役⽴ちます。

エコーでみた正常な下肢の⾎管と⾎流波形。エコー検査では⾎管の形態や⾎流動態を視覚的に観察します。健常な動脈波形は写真のように3相波を⽰しますが、狭窄がある場合は波形の⼭はなだらかとなりピークが不明になります。動脈硬化による⾎管の⽯灰化や⾎栓の存在についても調べます。

この検査画像を見て、誰でも異常がわかるわけではありません。臨床検査技師は、検査を正確に行い、異常を発見する高い専門性を持っています。
エコーなど患者さんの体を直接見る検査では、見落としなく正確に行うことはもちろんのこと、患者さんにできるだけ負担がかからないように手早く判断すること、患者さんの不安をなくすために声かけをすることなども重要です。臨床検査には、このような生体検査と、血液や尿などを分析する検体検査があります。これらを総合して患者さんの病気を発見し、治療という次のステップに進めることが、臨床検査技師としての醍醐味です。

動脈の中でも、脚の付け根、膝の裏など血管が分岐している場所は特に詰まりやすいため重点的に。患者さんが不安にならないよう、声を掛けながら手早く検査を進めます。

医療技術学部 臨床検査学科 助教

沖野 久美子

「医療系の中でも、人と接する仕事がしたい」と生体検査の臨床を経験。患者さんとのコミュニケーションの大切さを学生に伝えています。

岐阜医療技術短期大学(現岐阜医療科学大学)卒業。札幌東徳洲会病院を経て2019年から現職。
臨床検査技師、血管診療技師、超音波検査士(血管領域・循環器領域・消化器領域)北海道臨床検査技師会⽣理機能部⾨部⾨員、北海道CVT連絡会幹事、⽇本超⾳波検査学会北海道地⽅会委員会委員。
○専門研究分野/画像診断学

「医療系の中でも、人と接する仕事がしたい」と生体検査の臨床を経験。患者さんとのコミュニケーションの大切さを学生に伝えています。

岐阜医療技術短期大学(現岐阜医療科学大学)卒業。札幌東徳洲会病院を経て2019年から現職。
臨床検査技師、血管診療技師、超音波検査士(血管領域・循環器領域・消化器領域)北海道臨床検査技師会⽣理機能部⾨部⾨員、北海道CVT連絡会幹事、⽇本超⾳波検査学会北海道地⽅会委員会委員。
○専門研究分野/画像診断学