北海道医療大学の教育・研究

文部科学省に採択となった本学の新しい取り組み


個体差健康科学研究所

文部科学省「学術フロンティア推進事業」(平成14年度選定)

「個体差医療を目指した病態生理解析と創薬に関する先端研究」

研究プロジェクト名

・病態生理解析プロジェクト(顎口腔疾患と全身疾患の相互関連の解明)

・創薬プロジェクト(生体高分子機能解析と医薬分子設計)

研究目的

ヒトノゲノム計画の全遺伝子解読の完了を受け、、ポストゲノム計画では、遺伝子の変異およびタンパク質の機能解析が研究の主流となり、病態の背景にある遺伝的・環境的要因の解明を基盤としたテーラーメイド医療を目指した具体的な個人差の基礎研究が展開されはじめています。

21世紀の医療は、これまでの不特定多数の患者を対象とした「平均的医療」から、患者個々人の体質などを考慮した「テーラーメイド医療」への転換が図られようとしており、遺伝的背景や生活環境の違いに基づく個々人の疾患や薬物に対する感受性を解明することは、「テーラーメイド医療」の実現を目指す先端的かつ挑戦的な研究課題です。

本学では、そうした個々人の違いを遺伝子的に解明することを「個体差健康科学」と命名し、平成14年1月に個体差健康科学研究所を設立しました。そしてその研究所を中核組織として、学内外の共同研究を積極的に展開し、21世紀における「個体差医療」の実現を目指して、2つのプロジェクトを統合的に推進する研究課題に取り組んでいます。

病態生理解析プロジェクトでは、顎口腔機能の障害およびそれに伴う全身機能への影響について、分子遺伝学、分子生物学、分子生体工学等の手法で研究を展開し、高齢者における咀嚼機能障害による高次脳機能低下の誘導機構や、口腔疾患による全身の免疫システムの破掟機構を解明します。

創薬プロジェクトでは、薬物代謝機能における個体差の遺伝的・環境的要因を解明し、薬物による副作用を回避し、QOLの改善を目指します。そのために特に患者個々人の生理・代謝機能に配慮した医薬品や投与剤形の開発に向けて、薬物や食品成分とタンパク質との相互作用を分子レベルで解析します。

これらの研究プロジェクトの推進によって、病態の背景にある遺伝的・環境的要因の解明と、それに基づく「個体差医療」を目指した診断・治療のための基礎技術の確立が期待されます。

顎口腔疾患と全身の免疫システムの破掟機構や脳機能障害の誘導機構の解明は、口腔の問題にとどまらず全身機能の回復や健康維持に寄与し、またタンパク質の変異や遺伝子多型の正確な診断によって個々人に適した薬物療法の選択が可能となります。

積極的に個人の一生を通じての疾患の予防・治療計画を考え、個々人の遺伝的・環境的要因を考慮した治療を行う「個体差医療」を実現するために大いに貢献できる研究課題です。