最終リハーサル

本学、札幌医科大学、市民、
 たくさんの期待を乗せて”メディカル・カフェ”ついに発進!

8月10日(日)、学生がこれまで準備を進めてきたメディカル・カフェが開催されました。本学と札幌医科大学合同によるメディカル・カフェ開催は2回目となりますが、学生が開催を手がけるものとしては今回が初めてです。記念すべきトップバッターはDグループ。他グループの学生も多数ボランティアとして参加してみんなで作り上げるメディカル・カフェは、学生にとってこの夏いちばんの思い出になりそうです。
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第2回メディカル・カフェ 「脳が傷つくとどうなる?〜脳の中の役割分担〜」 市民の視線を感じながら・・・会場設営からスタート。
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11:00 集合
 JR札幌駅すぐそば、紀伊國屋書店札幌本店1階、夏の光溢れるガラス張りのスペース、インナーガーデンがメディカル・カフェの開催会場です。この日の集合時間は11時30分。にもかかわらず、時計の針が11時を回ったあたりから続々と学生が集まり始めました。到着したらまずは着替え。この日に合わせて制作した(なんと、ぎりぎり前日完成!)お揃いのポロシャツは鮮やかなブルー。白でプリントされた、胸元のメディカル・カフェのロゴマーク、背中の“STAFF”の文字がくっきりと浮かび上がり、早くも通りすがる人々の目を引きます。一人、また一人、ユニフォーム姿の学生が増えるにつれ、まだ設営前のがらんとした会場に、まるで体温が伝わるように連帯感が広がっていきます。
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11:30 設営
 点呼の後、今日のスケジュール、手順の確認。受付担当を中心に、数人の学生たちは早速、入口近くに看板と受付テーブルを設置し参加者に渡す資料の用意を始めました。A4のプログラムを二つに折り、コミュニケーションカード(質問シート)とアンケートを挟み込み、鉛筆を付けて、150セットほど準備。先生がたが持参した研究発表会やフォーラム等のチラシもきれいに並べて、受付は準備万端!と思いきや、テーブルクロスの敷き忘れという、初めてにつきものの小さな失敗が発覚しました。一方、会場設営担当も着々と仕事を進めています。音響設備やスクリーンが運び込まれ、参加者用イスは80脚ほど並べられました。だんだんカフェ会場の体裁が整ってくるなか、学生のテンションも確実に上がっていきます。「何があるの?」。書店のお客様、通りからガラス越しに見かけて興味津々で入ってきた市民が次々とやってきます。反応は上々です。
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12:30 スタンバイ
 マイクテストをして、スタンバイOK。開始1時間前からのビラ配りも予定通り始まりました。ゲストを出迎えるために、通りに出て到着を待つ学生もいます。「受付の後ろの柱にポスター張ったら目立つんじゃない?」とひらめいた学生は、プログラムを拡大コピーすべくコンビニへと走りました。
 本番が1時間後に迫り、司会者やメーンファシリテーターを勤める学生の表情からは緊張の高まりが読み取れるように。このドキドキ、実は準備を見守る先生たちも同じだったのです。「心配するとキリがないのですが、学生がいざとなれば驚くほどの力を発揮するのをこれまで何度も見てきましたから、きっと今日も応えてくれると信じています」(本学・阿部先生)。
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13:10 開場
 1時間も前から開場を待ちわびていた市民もいて、受付は好調な滑り出しとなりました。後方に増設したイスもすぐに埋まる盛況ぶりに、学生たちはほっと胸をなで下ろし、ぎこちないながらも精一杯の笑顔で参加者を歓迎します。足の不自由な参加者がいらしたときには、ゆっくりと席まで誘導するという心遣いも自然にできました。カフェのオープニングまで、スクリーンにはこれまでの授業風景をおさめた写真が映し出されます。これは阿部先生が、開始までの待ち時間を利用して学生たちのがんばりを参加者に伝え、学生の手によるカフェである点をアピールしたいと準備した映像演出。学生が妙に多いことを不思議に感じていた参加者も合点がいったようすでした。
 参加者が席に落ち着いたところで、フロアファシリテーターが両サイドに整列、司会者とメーンファシリテーター、タイムキーパーはスクリーン横にスタンバイ。見守る先生がたの表情も少し厳しくなったようです。みんなの鼓動が聞こえてきそう。いよいよ、メディカル・カフェの開催です。
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立ち見も出る大盛況!「メディカル・カフェ」、ついにオープニング。 写真6
13:30 オープニング
 立ち見の市民もたくさんいる中、いよいよ迎えたオープニング。本学の阿部先生と札幌医科大学の竹田先生が手短にこのメディカル・カフェが学生によりつくられていることを参加者に伝え、すぐに学生にバトンタッチ。ここからはすべて学生たちが進行を務めます。司会がカフェの説明とタイムスケジュールのアナウンスをし、メーンファシリテーターへと進行を交代。「初めてのカフェを、みなさんの温かい助けを借りながら進めたいと思います」という言葉にうなずく方もいて、学生の気持ちは会場を埋めた市民の方々にしっかり受け止められたようでした。
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13:35 ゲストトーク
 今回のゲストは本学心理科学部准教授・大槻美佳さん。「参加者のみなさんと同じ目線で」ということで、イスに座ってトークが始まりました。大槻先生の専門は脳損傷における高次脳機能の障害。この日のトークも、脳の場所による言語・認知・行為・記憶など役割分担の違い、傷ついた場所によって現れる実際の症状、また、代償機能(※)をわかりやすく伝えてくれるものでした。空間の認知が半分失われてしまった患者さんには示された図形がどう見えるかなど、具体的な症状もスライドを使いながら多く紹介され、外見からはわからない脳の傷による障害への理解を促します。脳の複雑な構造と機能という難しいテーマながら、参加者をぐんぐん引き込んでいくトークでした。
 しかし、好奇心をそそられても学生は聞き入いるわけにはいきません。話の流れを耳で追いながら、目では参加者の反応をうかがいます。話しが難しすぎるようならトークにも割って入らなければならないからです。幸い、大槻先生が会場の空気から理解を確認しながら話を進めてくれ、迷子になる参加者もいないようす。トーク終了前にコミュニケーションカードに質問を記入し始める姿もちらほら見えました。タイムキーパーが残り時間を大槻先生に伝えるために用意した「あと○○分です」というカンペのおかげもあり、大槻先生、時間配分も見事に30分のトークを終えました。
(※代償機能:低下した機能を他の部分が補おうとする機能)
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14:05〜14:20 休憩
 休憩時間に入ると会場では質問を記入したコミュニケーションカードを持った手が次々に挙がり、会場はにわかに“静”から“動”へ。フロアファシリテーターがイスとイスの狭い間と、トイレなどで席を立つ参加者の間をすり抜けながらカードを回収、1枚のカードに質問は1つというルールですから、回収と同時に新しいカードを渡します。集まったカードは内容ごとに分類してホワイトボードに張るのですが、その数は予想を上回る30枚ほど。ホワイトボード2面がいっぱいになりました。でも、喜ぶひまもなく全てに目を通す大槻先生とDグループのメンバー。質問タイムまでに、会場全体で共有できる質問を選ばなければならないのです。
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立ち見も出る大盛況!「メディカル・カフェ」、ついにオープニング。
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14:20 質問タイム
 メディカル・カフェで最も大切な時間がやってきました。市民と専門家の双方向コミュニケーションを叶える質問タイムです。コミュニケーションカードに記されたペンネームを読み上げ、挙手があればフロアファシリテーターがマイクを渡して直接大槻先生へ質問していただくという段取りです。
 脳の老化についての質問から始まった対話では、メーンファシリテーターが今流行の脳トレを話題として提示するなど、タイムリーなやりとりが交わされました。また、損傷箇所によって代償機能が働く場合と働かない場合があるか、病気を患った後、気持ちのバランスを崩すようになったのは脳のせいなのかなど、高次脳機能障害の患者さん本人やその家族からの質問も多く、学生たちは改めてこのカフェを待っていてくれた市民がいたことを知りました。なかには入院中にもかかわらず参加してくださった方も。仕事中にビルの7階から転落、MRIで脳に4本の傷がみつかったそうです。「どうしても聞きたいことがあります。この傷があっても長生きできますか?」。ひと言ずつ発せられる言葉を会場の誰もが胸が詰まる思いで聞きました。このときばかりは、学生も一市民となって参加者と一緒に大槻先生の答えを祈るような気持ちで待ってしまったかもしれません。「体の健康と脳の損傷は直接のかかわりはありません。安心して、健康に気をつけて暮らしてくださいね」。語りかけるような大槻先生の答えが会場を温かく包み、質問タイムの幕を引きました。
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15:00 エンディング
 時間オーバーすることもなく、初めてのカフェは無事に終了を迎えました。「みなさん熱心で、もっと詳しく話したいという気持ちになりました。市民のみなさんが知りたいこと、ニーズを直につかめて、私にとっても大きな収穫のある時間でした」。大槻先生の表情も晴れやかです。司会者が改めてゲストと参加者へのお礼の挨拶をすると大きな拍手が会場を包みました。学生たちの表情に、ひとつのことをやり遂げた充実感、達成感。参加者からは、学生が願ってやまなかった「あっと言う間だったね。もっと聞きたかったよ」という声もいただけました。孫に話しかけるように「がんばったね。次も、楽しみにしているよ!」と近くにいた学生を励まして帰路につく方も。これまで漠然としたイメージだった集団としての“市民”が、個々と出会うことで“人”として見えてくる、そんな素敵な時間でした。先生がたも「みんな、よくやってくれました」と安堵の表情。確かな手応えを得て、初めてのカフェは大成功!おつかれさまでした。
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合宿後の授業の流れ

脳が傷つくとどうなる? ●日時:
8月10日(日)
13:30〜15:00
●場所:
紀伊国屋書店
札幌本店1階
インナーガーデン
ゲスト : 大槻 美佳さん
(北海道医療大学 心理科学部准教授)
1962年生まれ。北海道大学医学部卒業。同大医学部附属病院神経内科医員として神経内科の研修後、新潟大学脳研究所、国立循環器病センター内科脳血管部門を経て、2003年北海道医療大学心理科学部准教授就任。
タイムスケジュール
13:30〜13:35 開会
13:35〜14:05 ゲストトーク
14:05〜14:20 休憩
14:20〜15:00 質問タイム
15:00〜15:05 エンディング
きょうの感想
奥村 本学心理科学部
臨床心理学科1年

奥村 遼
「カフェが終わったばかりで、今も少しだけ緊張しています。僕は今回司会を担当しました。実際に脳損傷を経験された方も来てくださっていて、みなさんの関心の高さに驚きと嬉しさを感じました。帰り際には、市民の方から“短く感じたよ”“次も楽しみにしているからね”と言っていただけて本当によかった。次はフロアファシリテーターとして、他のグループのサポートを頑張ります!」
五十嵐 本学心理科学部
言語聴覚療法学科3年

五十嵐 友紀
「メーンファシリテーターとして、ゲストの話を遮らないよう注意しながら進めることができました。多くの方が質問カードを書いてくれて、予想していた質問とは違うものも多く新鮮でした。質問コーナーでは、ゲストへ事前に考えていた質問をタイミングよくすることができて嬉しかったです。今はとにかくホッとしています。この授業を通して、人に伝えることの楽しさを実感できました」
谷口 本学心理科学部
臨床心理学科2年

谷口 真澄
「今日はボランティアとして受付を担当しました。Dグループのていねいな事前打ち合わせのおかげでメンバーの指示は的確、初めてのカフェなのにスムーズに動けました。楽しかったです!この授業で学生としての世界が一気に広がって、さらにカフェ本番を迎えた今日、じかに接することで市民の方々がとても身近な存在になりました。私たちCグループの本番、9月7日が待ち遠しいです」
参加者のアンケートより(一部)
  • 「世代を超えて会話ができ、楽しかった」
  • 「気軽に質問できる“参加型”であるのがよい」
  • 「コミュニケーション・カードを使った質問システムが素晴らしい」
  • 「予想していたより、わかりやすかった」
  • 「具体的な症例を見せてもらえたのがよかった」
  • 「学生さん、頑張っていましたね」
  • 「部分的な脳の傷だけで、全体がだめになるわけじゃないことがわかり、安心しました」
  • 「代償機能を知り、諦めかけていた今後に明るさを見いだせました」

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