研究内容

 

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唾液腺細胞を用いた細胞内情報伝達機構の解析

 

1)ラット耳下腺腺房細胞におけるCa2+ウェーブ。

 Ca2+は唾液分泌を制御する最も重要な細胞内メッセンジャーです。私たちは唾液腺のカルシウムシグナルをイメージング装置を用いて可視化し、その制御機構を解析しています。図1はムスカリン受容体アゴニストで刺激した時に見られるCa2+ウェーブです。細胞内Ca2+の上昇反応は腺腔膜の近傍で始まり、細胞全体に伝播することが明らかになりました。(Y. Tojyo, A. Tanimura and Y. Matsumoto. Cell Calcium, 22, 455-462, 1997.)

2)イノシトール1,4,5-三燐酸 (IP3) によるラット耳下腺腺房細胞におけるCa2+ウェーブ。

イノシトール1,4,5-三燐酸(IP3)は細胞内カルシウムストア(小胞体)からのCa2+放出を起こすセカンメッセンジャーです。サポニン処理した膜透過性耳下腺細胞をIP3で刺激したところ、アゴニスト刺激の場合と類似したCa2+ウェーブが惹起されました(図2)。この結果は、腺腔側に高感受性のカルシウムストアが存在することを示唆しています。(A. Tanimura, Y. Matsumoto and Y. Tojyo. Biochem. J., 332: 769-772, 1998.)

3)GFPで可視化したIP3受容体の発現と細胞内分布。

 蛍光タンパク質であるGreen Fluorescent Protein (GFP)とラットIP3受容体type3との融合タンパク質(GFP-IP3R3)を生きた細胞に発現させ、その細胞内局在を可視化しました。共焦点レーザー顕微鏡で観察すると、GFPは核を除く細胞質内に網目状に発現しており(図3)、小胞体マーカーであるDiOC6の分布と一致しました。さらに、発現したGFP-IP3R3はIP3によって活性化されるCa2+チャネルとして機能することを確認しました (Morita T., Tanimura A., Nezu A. and Tojyo Y. Cell Calcium, 31, 59-64, 2002.)。

GFPを用いたイノシトール1,4,5-三燐酸 (IP3)とIP3受容体の機能解析

 

4)FRETを応用したIP3センサー(LIBRA)の開発とIP3シグナルの測定。

 最近、我々は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を利用したIP3の蛍光分子センサーの開発に成功し、LIBRAと名付けました。LIBRAは、IP3受容体のリガンド結合ドメインの両端に2つの蛍光タンパク質(CFPとYFP)を融合した全く新しい蛍光プローブです。LIBRAを発現させた培養細胞(SH-SY5Y細胞)をサポニン処理で穿孔し、1,4,5-IP3を作用させた時のFRETの変化をAQUACOSMOS/ASHURAシステム(浜松ホトニクス)で測定した例を図4に示します。図4の左上は CFP画像、右上はYFP画像、下はCFPとYFPの蛍光輝度変化およびFRETの経時変化です。

さらに、我々は、IntactのSH-SY5Y細胞をアセチルコリン(ACh)で刺激した時のIP3濃度の上昇もLIBRAを使って測定できることを確かめました(図5)。イオノマイシン(Iono)はRatioに影響を与えませんでした(Tanimura A., Nezu A., Morita T., Turner R. J. and Tojyo Y. J. Biol. Chem. 279: 38095-38098, 2004.)。